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すれ違い8

間瀬の家を出て、自宅へと向かう。 電車に乗り、最寄りからの道のりを歩いていく。 未だ気持ちは晴れないまま。 しかし何をすればいいのかなんて分からない。 あんな強引なことをした手前、正直どう接していいのか…。 間瀬が言っていたように、大切なものなのだから手放したくない。 なんとかしなければ。 でもどうやって? そんなことが頭の中をメビウスの輪のようにグルグルと回っている。 そんな時、携帯が鳴った。 電話だ。画面には知らない番号。 無視しようかとも思ったが、ずっと鳴っている。 一度切れたと思ったらまた鳴り出した。 これはもしや、出るまで鳴っているのでは? そうなると誰かからの急ぎの用かもしれない。 松尾からのとか。 そう考えて通話ボタンを押した。 少し警戒しながら耳に携帯を近づけた瞬間… 『何やってんですか!!!』 という大声が聞こえて鼓膜がいかれそうになり反射的に耳から遠ざける。 なんだ? 今、何が起きた? 『どこをフラフラしてんですかアンタ!』 「…まず、誰か名乗ってくれないか」 『広瀬です!広瀬駿!』 「え」 間違い電話かと思ったが、思わぬ相手に一瞬思考が止まる。 『今まで俺、雪永さんと一緒にいました!偶々知り合いの家に行ったら彼もいたんです!』 「……そうか。それがな…」 『迎えに行って!今すぐ!!』 またも特大の怒声を浴びせられる。 しかし今度は言われた言葉の方が気になって携帯をそのままに声を上げた。 「ちょっと待て。なんでそうなるっ?」 『なんでも何も、こっちはとっとと2人のイザコザを解決して欲しいんですよ!』 「いっ…」 イザコザって、なんでこいつは知っているんだ。 千里に聞いたのか? 『雪永さん不幸にさせたら、許さないですから。その時は、俺がもらっちゃいますよ』 「っ、おい、それどういう…」 『〇〇駅に16時半着!絶対間に合わせて!』

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