61 / 108
愛しい人2
あれから何度か公園で会うようになり、いつしか悠斗さんに心を開くようになっていた。
最初は怖いおもちゃの印象だけが残ってしまい怯えていた。
でも彼がとても優しい人だと知り、いつしか公園は彼に会うための場所へと変わって行った。
早く会いたくていつもウキウキして、笑顔なおれを気味悪がったいじめっ子たちはあまり話しかけて来なくなった。
そんな時、悠斗さんから家に来ないかと誘われた。
家と言っても、彼は幼い頃に両親を亡くし、今は養護施設にいるらしい。
自分が行ってもいいのかと心配したが、友だちを呼ぶことはなんら問題はないらしい。
養護施設の話を聞いていると、暮らしは至って普通の家と変わらないように思えた。
習い事に行ったり、アルバイトをしたり、友だちの家に行ったり、みんなで買い物に出かけたり。
自分の知らなかった話の数々を夢中になって聞いていると、気づいたら養護施設に到着していて、中に入るよう促された。
すれ違う人たちにペコペコ頭を下げながら悠斗さんの後ろを歩いていく。
着いた部屋は、至って普通の1人部屋。
勉強机やベッドなどがある。
てっきり林間学校で泊まったような二段ベッドがあるような部屋かと思ったが、これもまた予想外だった。
「ちょっとここで待ってて、お茶出すから」
そう言って優しく笑う悠斗さんにコクリと頷く。
パタンとドアが閉まり、1人きりになった。
なんとなく部屋を見渡すと、ふと壁にかけられた白の道着が目に入る。
柔道?それとも空手?
不思議に思いながらそれを見上げる。
部活、だろうか。
穏やかなイメージの彼だけど、武道をしていることに驚いた。
のほほんとしていて、偶にわたわたと慌てている印象の悠斗さん。
大丈夫かな。
いじめられたりとか、していないだろうか。
「心配だ…」
「なにが?」
「えっ?」
振り返れば悠斗さんがドアを開けていた。
気づかなくてビックリしている中、彼は持って来たトレーを折り畳みテーブルの上に置く。
そのトレーに乗ったガラスポットに、僕は感嘆の声を上げた。
ともだちにシェアしよう!