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愛しい人3

「わぁ、きれいっ」 「ふふーん。だろ?」 目の前のキラキラ光る宝石のような液体に釘付けになる。 ガラスポットには、何か草というか花のようなものが入れられていた。 初めてみるそれに興味津々になる。 聞くと中に入っているものはハーブというものらしい。 たくさんの種類があって、薬にも使われるのだとか。 「ハーブから少しずつ色が出る様子を眺めてるのって、楽しいんだ。なんか、ゆったりできる」 「ゆったり?」 「うん。心がほっこりするよ」 正面に座る悠斗さんはそう言って笑みを浮かべた。 その笑顔に、まだハーブティーを飲んでいないのに心がほっこりする。 それがすごく心地よくて、おれもつられて笑顔になった。 ハーブティーを入れてもらい、お礼を言ってカップを受け取る。 一口飲むと、ふわっとハーブの香りが口の中で広がった。 ゆっくりと飲み込めばお腹がポッと温かくなって、無意識に呟く。 「おいしい…」 それに悠斗さんは嬉しそうな顔になった。 とくん。 心が波打った。 ほっこり。 ぽかぽか。 とくん、とくん。 この感覚は、一体なんだろう。 「ねぇ、悠斗さん」 「んー?」 彼なら分かるかと思って声をかけた。 でも、どう説明していいのか分からなくて固まる。 「千里?」 「……あの道着って、悠斗さん、着るの?」 結局尋ねられないまま、別の話題を振った。 まぁいいや。 ちゃんと整理できてから聞いてみよう。 「あーこれ?俺、空手やってるんだよ」 「部活?」 「ううん。習い事」 「へぇ。カッチョいい」 空手か。 もしできたら、強くなれるかな。 男らしく変われるかな。 「千里もやってみたら?」 俺の行ってるとこ、紹介するぞ? そう言われた瞬間、おれはパァァっと笑顔になったけど、すぐに思いとどまる。 だって習い事をするにはお金が必要だ。 毎日仕事をがんばっている母さんに、無駄な負担をかけたくはない。 ……でも。 「お、おれっ、今日母さんに聞いてみる…!」 そう思い切って宣言したおれに、悠斗さんは笑顔で頷いた。

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