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愛しい人5

悠斗さんとの交流は続き、おれは中学2年生になっていた。 悠斗さんは今高校3年生。 養護施設は19歳までしかいられないから、あと数ヶ月で施設から出なきゃいけないらしい。 「高校卒業したら、働くんだよね?」 すっかり慣れ親しんだ彼の部屋で、ハーブティーを飲みながら尋ねる。 9月の寒くなってきた今、温かいハーブティーが身に染みる。 夏に飲んだ冷たい方も美味しいけれど、やっぱりおれはこっちの方が好みだ。 「うん。でもここから近いところだから。どっかアパート借りることになるだろうし、決まったら連絡するよ」 そう言って頭を撫でられ、ホッとする。 嬉しいな。 これからも一緒にいられるんだ。 「なんだよ、にやにやしちゃって」 「えへへ。だって嬉しいから」 だらしなく表情を緩ませながら言うと、悠斗さんが口を閉じる。 笑顔じゃなくなった彼に首を傾げると、また頭を撫でられて静かに尋ねられた。 「また…、今まで通り、会いにきてくれるか?」 「? もちろん。なんでそんなこと聞くのさ」 その瞳が揺れるのが分かった。 反射的にその手に自分のを重ねて、悠斗さんの顔を覗き込む。 「……悠斗さんは、何を怖がってるの?」 おれの問いに、彼は僅かに目を見張った。 顔を向けられ、至近距離で見つめ合う。 そのまま両者とも黙り込み、静寂が続いた。 どれくらい経ったか。 静かなこの空間で、悠斗さんはポツリと呟く。 「施設のみんなはすごく優しいけど、本当の家族ではないから…。きっと俺は…」 唯一無二の存在が欲しいんだ。

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