73 / 108

残滓2

次の日、幸さんは早くから仕事だったようですぐに家を出て行った。 結局まともに話し合いはできなかったけれど、打ち明けられたことで、どこかスッキリしている自分がいる。   今日の予定は昼からだ。 ちょっと早いけど、支度をし始めよう。 そう考え台所は向かおうとした時 携帯の着信音が聞こえた。 「!」 一度動きを止め、ゆっくりと携帯を手に取る。 そこには一通のメール。 ──須藤さんだ…。 簡素な文面には、空いている日程と指定の場所。 あの時には何度もした彼とのやりとり。 ドクドクと、心臓の音が聞こえる。 苦しい。うまく、息ができな…… ──……千里。 「!」 弾かれたように顔を上げる。 今、自分の名を呼んだのは…。 悠斗さん…?それとも……。 「……ダメだ。しっかり、しないと…」 一度目を閉じ、大きく深呼吸をする。 「……断ろう」 ちゃんと会って、これで終わりにするんだ。 もう、彼と会うのもこれっきり。これが最後。 再び深呼吸をして、おれは連絡を返した。

ともだちにシェアしよう!