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残滓3

「相変わらずの機械音痴だな。ひどい文面だ」 「……」 携帯を手に笑みを浮かべる須藤。 スーツ姿で高級車にもたれかかる相手に、千里はギュッと手を握った。 駅の西改札口を出てすぐ。 この辺りは、あまり人が通らず閑散としている。 淡い街灯に照らされる須藤は、その鋭い視線を千里に向けた。 「なんでそんなに離れてる。もっとこっちに来い」 「……あの、やっぱりおれ…」 「千里。聞こえなかったか。こっちに来い」 「……」 少し迷った後、須藤の元に歩み寄る。 確かにこの話は周りに聞かれていいものでもない。 目の前までくると、強く腕を掴まれた。 腕に痛みが走り、千里は顔を歪める。 「須藤さっ、おれ…っ」 「逃げられると思っているのか?」 「ぇ…」 そのまま車に押し込まれた。 抵抗するより先に、強引に唇を塞がれる。 「んっ、んん…!」 咄嗟に千里は須藤の胸を押すが、一回りほど違う体格はビクともしない。 「今更抵抗するのか?あの時はされるがままに善がっていたくせに」 「っ、もう、昔のままじゃ、いけないんです…!」 「新しい男が見つかったからか?ふざけるな。言ったはずだぞ。お前は俺のものだと」 「ぃ、や…!」 なんとか外に出ようともがく千里の体を押さえ付け、須藤はその耳に口を近づける。 「大人しくしていろ。抵抗して傷を作っちゃ不味いだろ?人気俳優さん」 「…っ」 瞠目する千里に、須藤は不敵な笑みを浮かべた。

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