79 / 108
残滓8
1人であたふたしていると、電話越しにため息が聞こえる。
答えるのが遅くて怒らせてしまっただろうか。
謝ろうと口を開いたが、その前に彼に『すまない…』と謝罪されてしまった。
またわけが分からず目をパチクリさせる。
どうしよう。ただでさえ頭が回らないからついていけない…。
「あの、その、えと…、な、なんで、幸さんが謝るのでしょうか…?」
『いや、こちらが慌ててしまって、混乱させてしまっただろ?目パチクリさせてあたふたして』
「え。……電話って、相手の姿見えるんですかっ?」
『いや、別にテレビ電話ではないから。ただの推測だ』
「……テレビ、電話?」
聞いたことはあるけど、なんだっけ?
やったことないな…。
というか、なんでわざわざ電話するだけなのにテレビ要素がいるんだろう…。
というかどういった点がテレビ?
『千里?どうかしたか?』
「へ?…あ、ぁあはいっ、なんでしょうかっ?」
『君を不安定な状態のまま1人にしてしまったから、心配になった…。でも何回電話しても出ないし、メッセージも』
「え?」
うそ。連絡してくれてたの?
全然気づかなかった自分に驚きを通り越して呆れる。
でも、なんでそこまで…。
『なんともないか?少し、声が疲れていないか?』
「……」
『…千里?』
「……すみません。おれなら、平気です。心配してくれてありがとうございます」
なんで、この人は、いつも…。
胸に手を当て、ギュッと握る。
気がついたら、さっきあそこまで落ち込んでいたのがかなり楽になっていた。
終わらせなきゃ。
改めて決心する。
これは、おれの責任だから。
おれが…ちゃんと…
「頑張らなきゃ」
ともだちにシェアしよう!