82 / 108
さよなら3
「雪永くんが何を抱えて、何に苦しんでるのか俺は知らない。でも、少し俺と似てる気がしたんだ」
「……」
「でも忘れないで。雪永くんには、必死で手を差し伸べてるやつがいること」
「え?」
俯かせていた顔を上げれば、こちらを向いた間瀬さんが優しい笑みを浮かべていた。
そんな彼にぽかんとしていると、次には意地悪そうな顔に変わる。
「まぁ不器用で、面倒臭い、顔と演技だけが取り柄の男だけどな」
「ひ、ひどい言いようですね…」
「こっちは散々苦労させられてんだ。このくらい言う権利はあるっ」
そう言って立ち上がった彼は、おれの頭をくしゃっと撫で「そんだけっ。さ、戻ろーぜ」と歩き出した。
おれも後を追おうとしたその時、
携帯の着信音が鳴る。
ピタリと体が固まった。
間を開けてゆっくりと携帯を手にする。
メッセージの宛名には、須藤という文字が視界に入った。
ともだちにシェアしよう!