91 / 108
踏み出す7
それから幸さんの家に上がらせてもらって、おれはソファーで座ったまま動けなくなっていた。
一緒にいたいと言ったものの、他のことは何も考えていなかったのだ。
自分の考えのなさに呆れてしまう。
なんか、こんなくっ付いて来ちゃって、すごい恥ずかしいな…。
でも、それでも一緒にいたかった。
1人になりたくなかったのもある。
でもなにより、幸さんと、離れたくないと思ってしまった。
「千里?」
「!」
声がして、パッと顔を上げるとお風呂上がりの幸さんがいた。
あれから2人とも疲れているし、早めにお風呂に入ることになって、幸さんに先に入ってもらったのだ。
「風呂、お前も入って来い」
「っ、あ、は、はいっ」
そそくさと彼と入れ替わり、まだ入ったばかりで温かいお風呂に落ち着かなくなる。
幸さん家のお風呂…、なんかドキドキするなぁ。
幸さんの匂いだ…。
うひゃー、シャンプー使わせてもらっちゃってるよ。
そんなこんなワタワタしながらお風呂を済ませて、洗面所に出た。
取り敢えず一息つき、体を拭こうとする。
「あ」
タオル…。幸さんの、タオル…。
「千里」
「はぃぃい!?」
その時リビングから幸さんの声がして飛び上がる。
それに対して彼は気にする風もなく続けた。
「タオルは勝手にそこにあるやつ使ってくれ。着替えは一応置いといた。俺ので悪いけどな」
「!」
おれの服は…、洗濯機の中だった…。
ともだちにシェアしよう!