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踏み出す13

「指、入れるぞ」 「…はい」 おれの涙を拭いながら、ゆっくりと彼の指が中に入ってくる。 その感覚に咄嗟に足を閉じようとしたが、いつの間にか足の間には幸さんがいて上手くいかなかった。 「千里、仰向けのままで、いいか?顔、見たい」 「ぁ、はぁ…っ、ぅ、う、ん…っ」 「ははっ。どっちだ」 快感で頭がいっぱいで、ろくに答えることもできない。 必死にこくこくと頷けば、幸さんは嬉しそうな顔をした。 出会った頃からは考えられないくらい表情の豊かな彼に、言葉にできないような気持ちになる。 「も、う…いい、から…っ。幸さんっ…きて…っ」 「…千里」 目を潤ませてそう強請る千里に、幸は熱のこもった声を漏らす。 正直そろそろ限界が近かった。 早く千里と交わりたくて仕方がない。 痛い思いはして欲しくないと思い慎重に触れていた。 けれどもう我慢できそうにない。 「千里…、力、抜いて…」 「ぁ、ぁあっ…、ゆき、さ…っ」 先端を押し当て、ゆっくりと押し込んだ。 千里の中は驚くほど熱く、一瞬で理性が飛びそうになる。 しかしそれをなんとか堪え、一旦動きを止めた幸は千里の顔を覗き込んだ。 「千里、平気か…?」 「…へへ。へいき、です…」 可愛らしく笑う千里に、こちらも笑みを浮かべる。 そして前髪をかき上げ、その額にキスを落とした。 千里をギュッと抱きしめて、その頭に顔を埋める。 ほんのりハーブの香りがして、幸福感が込み上げてきた。

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