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始まり4

「いや、あの、手渡ししてくれれば…っ」 「いいから、千里はここに座れ」 「えぇ…っ」 すっかり今まで優しくされ続けていて、 彼が周りからは王様キャラとして知られている事実をすっかり忘れていた。 「シャワーかけるぞ。目、閉じてろ」 「あの、おれ、幼稚園児じゃないです…」 こういうことするの、きっと慣れてないんだろうな…。 なんか散々恥ずかしがってたけど、そういう雰囲気なんてまるでない。 例えるならせっせと飼い主に体を洗われるワンコの気分。 それから幸さんに体をピカピカに洗われ、満足したのか自分も洗った後、2人でお湯に浸かった。 広めのお風呂だけど、やっぱり狭い。 膝の上に座らされ、背後から抱きしめられるこの状況は、どうにも落ち着かなかった。 おれがもじもじしていると、幸さんが覆いかぶさるようにこちらを覗き込んでくる。 「どうした?」 「あ、いや、落ち着かなくって…」 「そうか。まぁ、きっと慣れだ」 「慣れ…」 こういうのって、やっぱり慣れるのかな…。 悠斗さんの場合は、小さい頃から一緒にいたから抱きついたりとかは普通にできてたけど… 「千里」 「!」 「大丈夫だ。余計なことは、考えなくてもいい」 「…幸さん」 振り向けば、優しく微笑んだ幸さんがいる。 その顔を見たら、胸にあった不安がきれいになくなった。 そして引き寄せられるように唇を重ねる。 混ざり合って、まるで1つになるような感覚に幸せが膨らんだ。 少し顔を離して至近距離で見つめ合う。 頭を撫でてくれるのが気持ち良くて、おれは幸さんの方を向き、ギュッと抱きついた。 きっとこれは、慣れるとか慣れないとかじゃない。 ふとした瞬間に、どうしようもないくらいに幸さんを求めている自分がいる。 そういう時に、こうして我慢せずに手を伸ばせられればいいのだ。 「幸さん。おれ、イチャイチャできるよう頑張りますねっ」 「…別に、頑張ってすることでもないが…」 意気込むおれに苦笑いを浮かべた幸さんだけど、 次にはまた、優しくおれにキスをしてくれた。

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