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始まり5

「どうぞ」 「ん。ありがとう」 作ったハーブティーを渡し、向かいの椅子に座る。 少し小腹が空いていたので、夜遅いという罪悪感がある中、幸さんの作ってくれたご飯をご馳走になった。 簡単なもので悪いと言われたけど、これがもうとても美味しい。 幸さんって料理の才能もあるんだ。 演技できるし、かっこいいし、 ほんとスーパーマンじゃないか。 今は食後にゆったりとハーブティーを飲んでいる。 だんだん暑くなってきたものの、まだ夜は少し冷える。 おれの場合、夏でも全然温かいハーブティーを飲むけれど、やっぱり1番美味しく感じるのは冬だ。 雪国育ちということもあり、断然寒さの方に耐性があるおれは、季節の中では冬が好きだったりする。 でも東京はあんまり雪とか降らないしなぁ。 雪だるまとか作りたいけど。 学校の授業でやったスキーも、ここ最近は全くやる機会がないままだ。 「早く冬にならないかなぁ」 「まだ夏にもなりきってないだろ」 ポツリと呟いた言葉に、幸さんが呆れたように笑ってハーブティーを飲んだ。 なんだかそんな姿でさえかっこよくて見惚れていると、カップから口を離した彼は、優しく微笑む。 「やっぱり、美味しいな」 その時、胸のあたりにじんわりとした温かさを感じた。 …あぁ、そうだ。 「好きって、こういう感じでした」 「え?」

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