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始まり9
もっこりと膨らんだ布団に、幸は苦笑いを溢した。
昨日の夜は自制が効かず
千里がいやいやと言っても止められず
かなり激しめの行為になってしまったわけで…。
今日俺は休みだが、千里は午後から仕事だ。
それなのにいろいろと無理を強いてしまったことは、流石に申し訳なく思う。
すっかり拗ねて布団に閉じこもってしまった千里に、幸は気まずそうに声をかけた。
「悪い…。つい、やり過ぎた…。午後から仕事なんだろ?朝ごはん作ったから、食べないか?」
「……」
少しして千里はピョコッと顔を出す。
むくれっ面でこちらをキュッと睨みつける彼は、まるで警戒心の強い猫のようだ。
「お。洞穴から出てきた」
「おれは今寝ています」
「え?」
「おれは今寝ています」
どういう堂々とした嘘なんだ。
そう心の中で呟き、幸はベッドへと腰を下ろす。
「じゃあ眠った姫を起こさなきゃな」
「え」
言うな否や、ちゅっと幸はキスを落とした。
された千里は暫く固まっていたが、次には顔を赤らめ動揺し始める。
いつまでも初心な反応に、幸は口元を緩ませた。
「可愛いな、千里は」
「!?やっ、やめてください…っ」
さらに顔を赤くして俯いた千里は、次にはふっと悲しげに眉を寄せた。
その変化に気づいた幸は、「千里?」と彼の顔を覗き込む。
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