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五、ハルジオン⑬
ぎゅっと……
ゼスカが手を握ってくれた。
(なぜ?)
分かるんだろう。
過去なのに。
不安で胸がいっぱいになる。
なぜ、俺の気持ちが分かるんだろう。
夜の浜辺で、互いの顔さえよく見えないのに。
手の温もりに救われている。
「夜が明けて、朝が来て。海軍寄宿舎に戻った日の夜」
先生に、俺は……
「ブレスレットをもらって泣いたんだ」
悲しすぎるプレゼントだった。
悲鳴を上げているあなたの心の叫びが聞こえるのに、俺はなにもできなくて。
人間は無力で、戦争は無慈悲だ。
夜は明ける。
朝が巡って……
「出撃の日がやって来た」
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