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洗濯物(つむぎ)

酔っ払ってしまった 久々に給料が出て 酔っ払って気持ちよくなるまで飲んで うぇーい、ばいばい、と 友達と別れて電車に乗った飛び乗って 家の最寄り駅について 家に向かって歩いていた 明日朝バイトだからアラームかけとこ、と 酔っ払ってるのに最後の理性でそれをかける 歩きながらアラームをかけて ふと、顔を上げると 『あれ、』 これ、おれんちの近くの駅じゃない 『まちがっちゃったー』 祈織さんのおうちの近くの駅だった ええ、おれ終電で帰ってきたのに タクシーのるしかないかな、と ため息を吐いた時に気付いた 『おしっこ、したい』 お酒飲んだからだ お腹が重くなってる 『ぅえぇん、』 こんな夜中に 道端でひとりぼっちで おしっこしたいなんて、と情けなくなって 少し涙が出た しかも、酔っ払ってて気付かなかったみたいで もう結構切羽詰まっている コンビニとか行ってトイレ借りよう、と コンビニがある方を探す 酔っ払って祈織さんのおうち向かってたから 駅から既に離れていた 駅近くだったらコンビニあるのに おれって本当にまぬけ、と悲しくなりながら 駅の方に戻ろうと考えるが 『っ!』 じわ、と手の中があったかくなって思わず座り込む おしっこ、もうそこまで来てるやつ やばいやばい、と抑える力を強めても じわ、じわ、と少しずつ出始めていた おれの身体本当にばか括約筋酔っ払って寝てるんじゃねえのかな おもらしのプロのおれからすれば これは駅までもたないやつ、と容易に理解できて とりあえず公園とか近くに無いか探すけど 無くて しかもこんな時間なのにちょっと人通りがあるから、こんな所に座り込んで股間抑えてるの恥ずかしくて 涙目になりながら細い道に駆け込んだ そしたら急に動いたせいで我慢の限界で じょろっ、と多めの量が溢れ出して まじで漏らすやつ、だと背中がさーってなって 酔いとかもうそれどころじゃなくて 急いで前を開けてちんこを取り出そうとする 『っぁ、あっ、ちょ、っ、まって、ぁっ』 けど、手を離したらもうダメで おしっこは じょ、じょわっ、ちょろちょろ、と断続的に溢れ出しておれのパンツをじわじわ湿らせ ズボンに染み込み太ももを伝っていく 『っぁあ、まって、』 いくらまって、と言っても待ってくれなくて もう一度しっかりとちんこの先っぽを握ったけど1度出始めた物は止まらなくて じょわじょわと指の隙間から溢れ出して 地面に零れぴちゃぴちゃと音を響かせる 『っぁあ、あ、ぁ、』 全部出ちゃった…… おもらししちゃった、 前までは仕事で散々していたけど 仕事辞めてから おねしょ以外は始めてで 久々のおもらしにかなり落ち込んで涙が出る 確かにあの仕事のせいか トイレ近くなってチビったりしてたけど完全にアウトはなかったのに、 最近はおねしょも全然しなくなったから 油断していた グズグズと情けなく泣いてしまう どうしよ、これ こんなんじゃタクシーも乗れない こんな時に頼れる人なんて 1人しか居なくて 情けないし、せっかく自立したのに、 でもどうしようも無くて 電話した 起きてて、欲しい 『もしもし、ごめんなさい、急に。起きてた?』 『もしもし、どしたの、おきてたけど』 『今、祈織さんのおうちの近くにいるんだけどね』 『あー、うん。そうなんだ、』 『…おもらし、しちゃったから、祈織さんに助けて欲しくて』 『……どこ?』 『えっと、周りなんもないんだけど…駅から5分くらい来たとこ。祈織さんのお家、行ってもいい?』 『来れる?迎えに行こうか?』 『えっと、1人で行けるけど…いい?おれ、おしっこ塗れなんだけど』 『そんなの今更じゃん。おいで。待ってるから』 と、電話の向こうでちょっとだけ祈織さんは笑った 嬉しかった 1人でおもらしして泣いてたのに 祈織さんが笑ってくれたおかげで 大したことないような事に思えた 歩くと靴に入ったおしっこが がっぽがっぽして気持ち悪くて 公園で靴と足元だけちょっと洗ってから祈織さんのおうちに向かった 持っていたハンカチでどうにもならないくらいびしょ濡れだったけど アスファルトに水が染み込んで 祈織さんのおうちに着く頃にはそんながっぽがっぽし無くなっていた ピンポンを押すと無言でオートロックが開いて 部屋の前のピンポンを押すと 祈織さんはすぐに開けてくれた 『はい、タオル。そのまま風呂行っちゃいな』 『うん、ありがとう』 と、足元とか身体を拭いて 床を汚さないように気を付けて そのまま風呂に向かって 汚した洋服とパンツも予洗して 洗濯機を借りようとしたら 洗濯物が山盛りだったから おれが風呂出てからおれのは洗わせてもらおうと考え、いおりんさんの洗濯物はおれが風呂はいっている間に回しておく事にして 身体を洗いに風呂に入った 全身洗うとようやく落ち着いた あー、情けないなあ またおもらしして祈織さんにお世話になっちゃった ちゃぽん、とお湯に使った頃には完全に酒は抜けていて お風呂から出たらとりあえず浴室乾燥で祈織さんの洗濯物は先に干しといて おれの服とかも洗濯させてもらうことにした 祈織さんのスウェットと新しいパンツを貸してくれてそれを身にまとってリビングに行くと祈織さんはソファの前に座ってテレビを見ていた なんか、出ていってそんな経ってないのに懐かしく感じる 『さっぱりした?』 『うん、ありがとう』 『なんで、もらしてたの?』 『……酔っ払って、まちがえてこの駅で降りて、気付いたらトイレ限界で漏れちゃった』 『成長してな』 と、祈織さんに笑われてしまう 『祈織さんの洗濯物。干しといたから許して』 『あー、そんな事してくれたんだ。ありがとう』 『つか散らかってるね、田中さんは?』 『なんか家の方が忙しいみたいで暫く休むんだって。だからおれも暫くハウスキーパーさんお休みしてんの』 なるほど、だから散らかってんのねと納得した 『泊まってくよね?』 『えっと、』 『おれまだ寝ないからベッド使っていいよ』 『なんで、寝ないの?』 『うん、寝るならここで寝るし』 と、ソファの上には毛布があって きっと祈織さん最近よくここで寝てるんだろうな 『えっと、おれ、』 『つむ、おやすみ』 と、祈織さんに言われたら おれはもう寝室に行くしか無くて 『おやすみ、いおりさん』 せっかく祈織さんのおうち来たのに 1人で寝るんだって思ったけど 大人しく、寝室にむかった

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