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友達(祈織)
遊びにきてください!
いつですか?
と、つむぎから返信があった
その返信があった時に自分の送ったメッセージを見たけど
誤字だらけというか半分以上目を閉じながら送ったやつだから読めたもんじゃなくて
よく解読できたな、と感心した
つむが出勤ある日がいい
と、返信すると
すぐに何日か返信がきて
そのうちから選ぶ事にしたけど
おれも仕事はじめたばかりで休みが自由じゃないから結構先になってしまった
楽しみだな、つむと会うの
「志波さん、さっき完成したやつ、動作チェックお願いできますか?」
『はい』
と、スマホはしまって仕事に集中する
まだ2日目だけど何となく仕事に慣れた
仕事に慣れたというより
働くのってこういう事だったな、と少し思い出した
そして、初めてちゃんと自分でやりたいこと考えて探した仕事は
やりたいこと探しただけあってなんだか少し楽しくも感じる
慣れないから帰った後とかめちゃくちゃ疲れるけど
あと昼休みとか1人でいると
気が抜ける
昼休みになり、今日は昼飯どうしようか、と
とりあえず喫煙所でぼー、と考える
適当にチェーンのカフェでもいいかな、と
タバコを吸い終わったら行くことにした
最近、飯食うのずっと独りだな…
良く考えれば
仕事以外の会話ってしてない気がする
ここ最近
社会人のひとり暮らしってこんなもんなのかな、世間一般的に
一時期1人で暮らしてたときもあったけど
その時は前の会社だったから
知り合いばっかりだったし、
あいつも、いたから普通に仕事以外の話もしたし
そして、ついこの間までつむが家にいたから帰ったら会話できる生活だったし、
友達も恋人もよく考えればいねえしな、おれ
あ、あきらくんは一応友達か
あきらくん、会いたい
と、昼休みにあきらくんにメッセージを送った
◆◆
えええ、いおりんがオレに会いたいとか大丈夫?疲れてんの?飲み行こ
と、あきらくんから返事があって
明日が休みだから早速飲みに行くことにした
仕事が終わって
待ち合わせの場所に向かうと
あきらくんが笑顔で手を振ってきて
あきらくんだ、とすぐにあきらくんの首に抱きついた
「え?え?いおりん?ここ、人通りあるけど!?」
『あきらくんだ、』
「ちょ、とりあえず、どっかいこ?」
と、あきらくんにぽんぽん、と背中を撫でられて
あきらくんから手を離すと
あきらくんはどんどんどこかへ向かって
そして個室の居酒屋に入って
ようやく落ち着いた
『あきらくん、』
「なに」
『今日おごって。おれ財布忘れてきた』
「いいけど…なに?いおりん今日どうしたの?」
『べつに、昼休みにカフェ行った時に気付いて、まぁ、Suicaで払ったけど』
「いや、うん。そうじゃなくて」
『タバコ吸っていい?』
「うん、吸いなよ。で、何飲むの?いおりんビール飲めないからハイボールでいい?」
『うん、なんでもいい』
と、あきらくんが注文してくれて
運ばれてきて
乾杯をしてすぐに
人肌に触れたくて
あきらくんの隣に移動した
「ちょっ、いおりん?そういうの良くないよ?だからいおりん友達いないんだよ?」
『ええ、なにが?』
「オレ、ゲイよりのバイって知ってるよね?」
『だから?』
「それなのに会いたいとか抱きついたりとかベタベタしてきてさ」
『だって、あきらくんはおれの唯一の友達だから、』
「もー、オレがわるい男だったらいおりん食べちゃうよ?ほら、疲れてんでしょ?いっぱい飲みなー」
と、お酒を勧められて一気に半分くらい飲んだ
『あきらくんは、おれの事好きじゃないからいいじゃん』
「いや、そうだけどね?男なら、好きじゃなくてもえっちくらいできるでしょ?」
『……うーん、そうだけど。あきらくんはそういうのないから安心できるんだけど』
「…いおりんって本当に碌でもないよね。実は」
『おれにこんなこというの、あきらくんくらいだよ』
「みんな思ってるよ、実は」
『そうなのかな?』
「……それで?何かあったの?」
『………なんもないけど』
「なんもないのにいおりんがオレに会いたがるの?」
『なんもないけど、…誰かと、喋りたくなった』
「いおりんのおしゃべりって、えっち込だからやめた方がいいよ?」
『……あきらくんとはそんな事ないじゃん』
「そうだっけ、」
『そうだよ、ほら、あきらくんもはやくビール飲みなよ』
と、あきらくんにビールを進めると
ごくごく、と一気に飲んだ
「いおりんさー」
『なに?』
「いおりん昔、オレのことフェラしたの覚えてる?」
『……なに、いきなり』
「いおりんと飲みに行ってさー、いおりんが1人になりたくないって駄々こねるから仕方なくっていうかちょうどいいから口に突っ込んでやったんだけど」
『……あきらくんっておれに碌でもないって言えるほど碌でもある人じゃないよね?』
と、あきらくんは
おれの言葉は無視して残ったビールを飲み干し
おれのぶんのハイボールと一緒にオカワリを注文した
「あの時もいおりんひとりで暮らしはじめたばっかりの時だったんだけど」
『……うん、そうだけどよ』
「いおりんは寂しがり屋なクセに、上手に甘えられない時は俺のところ来るよね」
『……なにそれ、』
「んー、都合のいい男?オレ」
『…ちがうよ、あきらくんは友達だから』
「まぁ、いおりんと友達になれるのはオレぐらいだから仲良くしてあげるよ」
と、よしよし、と肩を撫でてくれた
『んんん、』
久しぶりに、人と会話した
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