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漫画(祈織)
目を覚ますと
何故かあいつの部屋にいて
なんで?と辺りをきょろきょろと見回す
あいつの姿はなくて
なんでだ?とベッドから降りると
何故か下はおむつだけで
恥ずかしかったから
上を伸ばしておむつを隠す
リビングに行くとあいつは居なくて
シャワーの音がしたから恐らくシャワーを浴びているのだろう
テレビをつけて待っている
あいつ仕事行くのかな
それなら俺も家出なきゃだから着替えたほうがいいんだろうけど
着ていたはずのスーツがない
とりあえずあいつ待ってるしか無いな、と
ソファに横になる
「お、シバ。起きた?」
『んー。おれ、なんでここにいるの?』
「…覚えてねえの?」
『うん』
「………昨日。あきらくんと飲んでたんだろ」
『あー、うん』
「それでお前潰れて。あきらくんがここに連れてきたんだよ」
『なんであきらくんここにしたんだろ』
「連れて帰ってもらおうと思ったんだけどよ。お前漏らしたじゃん」
『……漏らしてないけど』
と、自分の履いているおむつを確認するけど濡れていない
「とりあえず廊下に置いたら漏らして。スーツ全部ぐっしょぐしょになったぞ」
『………ごめん』
「それで片付けておむつ履かせて。ソファに寝せといた」
『おれ、ベッドで寝てたけど』
「夜中おねしょして起きてベッド来たんだろ。それも覚えてねえの?」
そう言われ
もう一度、一応おむつの中に手を突っ込むけど濡れてない
『おねしょしてねえよ』
「したよ。おむつにパット入れてんのにすっげえ出して、スウェットまで濡らしたじゃん。それで俺がおむつ替えてやったの」
『………んんん、くやしい』
「なにが?おねしょしたの?」
『うん、』
「今更かよ」
『おれもうすぐ30なのに』
「それ俺が昨日言った」
『……そうなの?』
「うん」
と、さっさと歯を磨いていて俺も歯磨こ、と洗面所に向かう
「シバ、どうせ溜まってんだから先にトイレ行っとけよ。まだ漏れてねえんだろ」
『……言われなくても行くし』
と、指摘されまた悔しい思いをする
なんかこんなん、いつまで経っても変わんねえじゃん
ちゃんとトイレに行ってから
おむつは脱いで
パンツを出して履き替える
歯を磨きに洗面所に行くと
ちょうど歯を磨き終わった匡平とすれ違うから
おれも歯ブラシを咥えながら
匡平について行く
「シバ、朝飯食う?」
『…ふれんはらふう』
「は?食うの?」
くれんなら食う
と、言ったのに
歯ブラシを咥えているせいで伝わらなかったようで
とりあえず頷いておく
『ほはへはいふぁは?』
「何言ってるか分からないけど」
と、1度歯ブラシを抜いて
『おまえ、かいしゃは』
と、聞き直す
「あー、休みかな」
『ふぇえ』
休みか、
よかった、と歯磨きの続きをして
口をゆすぎ顔を洗ってリビングに戻る
「そう言えばなー」
『うん』
「瀧、この前有給使って連休取ってたんだけど」
『うん、大丈夫だった?人手』
「まぁ、それはな。それでどこ行ったとおもう?」
『えー、知らん』
「1人で島根の出雲大社行ってきたんだと」
『出雲大社?なんで?』
「結婚してえんだって。ご利益あるらしいじゃん」
『へえ、遠いのによく行ったね。行動力あるのかないのかよくわかんねえけど』
「だよなあ。もちろん神だのみだって大事だろうけどそんな行動力あるならまずは近場でなんかすりゃいいのに」
『なー、』
「あー、後」
『うん』
「お前の好きなもちロールあるじゃん」
『うん、すき』
「あれ、期間限定でチョコミント味出てたぞ。俺チョコミント好きじゃねえけど」
『そういやそうだっけ。ミント。おれは食いてえ』
「見つけたら買えば?」
『うん。期間限定でしょ?近いうち見てくる』
「おー、そうしろ」
と、朝ごはんを作りながら
あいつは朝から色々よく喋る
「……コーヒー飲む?」
『のむ』
「目玉焼きとスクランブルどっちがいい?」
『スクランブル』
「パンは?食う?」
『……うーん、酒で胃もたれしてる気もする』
「じゃあレトルトのしじみの味噌汁飲んどけよ」
『効くの?しじみって本当に』
「プラシーボ効果もあって効くだろ」
『それ言ったら効かねえんじゃねえの』
「だから効くって」
『…じゃあ、のむ』
「おう。トマトは…この時期まだ食えるよな」
『よく覚えてるね。食えるよ、別にいつでも』
「冬は食わねえじゃん。寒いからって」
『だって身体冷えてトイレいきたくなるんだもん』
と、話しながらあっという間に朝ご飯を作ってくれて
食卓に並べられる
『いただきます』
「いただきます」
と、しじみの味噌汁から口をつけると
本当にプラシーボ効果か
お酒でモヤモヤしていた感じが少しマシになる
『プラシーボ効果』
「なに、感じてる?」
『うん、感じてる』
「単純だな」
『うっせ』
「……シバ、この後どうすんの?」
『……特に決めてねえけど』
「帰んの?」
『うーん、』
「なに?」
『お前は?今日は?』
「特に予定ねえけど。つかシバ今日休み?」
『うん。休みじゃなきゃ飲まねえ』
「まぁ、そりゃそうだな」
どうしようかな、帰ってもやる事ないしな
休みなのにこんな早めに起きたって
やる事ないし、行くとこもないしなー
「あ、」
『ん?』
「あー、えー、」
『なに?』
「お前、鬼〇の刃って漫画読んだ?」
『え?読んでないけどなに?』
「流行ってるだろ?」
『あー、うん。名前は聞いたことある』
「あれ、面白いから読めば」
『読んだの?お前は』
「うん。あ、漫画あるから持ってっていいよ」
『あー、ありがとう、持ってく』
「うん」
と、何故か急に漫画を貸してくれる事になった
『……なんか、』
「ん?」
『今日良くしゃべんね』
「……お前が言ったんだろ」
『……ん?』
「昨日、言ってたろ。しゃべってって」
『……覚えてねえけど』
「…ふーん、しゃべんない方がよかったか?」
『ううん、いっぱいお前の声聞けて嬉しい』
おれ、そんなはずかしい事言ったのかよ
そんなの、一切覚えてねえけど
おれがそう言ったから
俺のためにいっぱいしゃべってくれたんだって
なんかすげえ満たされんだけど
なんなんだよ、お前
そんなの、ずりいじゃん
「シバ」
『…なに、』
「なんかあったの?」
『なんもねえけど……なんか、人と話してねえなって思って』
「話してねえの?」
『仕事ではちゃんと話すけど』
「うん」
『仕事おわって、帰ると誰もいねえし。俺、友達とかもあんまいねえじゃん?』
「あー、」
『だから、昨日あきらくん誘って飲みに行った』
「あれは、あの子供」
『つむ?』
「うん」
『つむとは休み合わなくてしばらく会ってない』
「へえ、」
つむと約束してんの、もうちょい先だし
「俺に連絡してくればいいじゃん」
『……なんて、お前のこと誘えばいいかわかんねえんだもん』
「……あきらくんにはなんて誘ったの?」
『会いたいって』
「別に俺もそれでいいし」
『おまえ、忙しいじゃん、』
「シバの為なら予定空けるし」
そんなの、おれ負担になるじゃん
せっかく、独り立ちしようとしてんのに
『わざわざ、いいよ、そんなん』
それに、お前からおれの事
あんまり誘ってくれねえじゃん、
おればっかり会いたいじゃん、
『お前、この前おれが風呂入ってる間に帰ったじゃん』
「この前?」
『寿司行った時』
「あー」
『おれ、待っててって言ったのに』
「だって別にお前用事無かったろ?」
用事って言われたらなかったかもだけど……
おれはお前と一緒に居たかっただけなのに
おれ、知ってるし
おれが求めたら
元飼い主だから応えてくれる
しゃべってって言ったらしゃべってくれるし
キスしてとかエッチなことしてっていったら
きっとそれもしてくれる
けど、
別にお前はおれいなくても平気なんだろ?
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