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修行(祈織)
サイフォンを購入し
自宅でコーヒーを入れる練習をしていた
マスターに教えてもらった通りやってみたけど
できあがりはなんかやっぱり違って
『うぅうん、修行しかないのかな』
と、自分のいれたコーヒーを飲んでも何となく納得できないでいた
やっぱり一夕一朝でできるもんじゃないんだな
暫くは修行か、と納得のいかないコーヒーを飲み干した
コーヒー練習してんだけど
マスターみたいにできない
と、つむに画像付きでLINEを送る
するとすぐに
祈織さんサイフォン買ったの!?
すげえー!
と、返信がくる
飲みに来る?
と、もう夜だけど
何となく言ってみると
え?いいんですか、
でもおれ、明日朝からバイトで
じゃあ泊まれば?
と、すぐに返信してしまう
いく!起きてて!
と、つむはすぐに返信してきて
思わず少し笑ってしまう
つむ来るんだ、
つむの家からどれくらいかな
早くつむ来ないかなー、と
新しいコーヒーをいれる準備をしながら待つ
◆◆
『あれ?なんで漏らしてんの?』
インターフォンが鳴って
オートロックを開けて玄関空いてるから勝手に上がってきてと伝えてトイレに入った
さっきからずっとコーヒー飲んでいたからトイレが近い、とトイレから出ると
目の前でつむがおしっこを漏らしていた
よっと、と水たまりを避けてトイレから出て
『祈織さんなんでトイレはいってんの、』
『え、おしっこ』
『おれだっておしっこしたくて我慢してきたのに』
『ええ、そんなの知らないよ』
と、足元をびしゃびしゃにしながらつむが怒っている
いや、知らないってそんなん
『シャワー浴びといで』
と、つむのズボンと下着を脱がせて
タオルでざっと身体と床を拭いてやる
『うぇぇん。おれ、最近おもらしばっかりする』
『かわいそう』
よしよし、と頭を撫でると
『おしっこ拭いた手で頭撫でないで!』
『お前のじゃん』
『より一層!』
泣き出したから一緒にシャワーしてやろ、と
風呂まで連れて行って
バンザイさせて上も脱がしてやる
『洗ってくれるの?』
『うん。泣いててかわいそうだし』
と、紬の子供みたいな包茎ちんぽにお湯をかける
『今更なんだけど包茎って剥いて洗うの?』
『え、うん、』
『皮の中におしっこ溜まってパンツ汚れる?』
『えっと、気を付けないとそうなる』
『大変なんだねー、この余った皮』
ぴよん、とちょっと皮を引っ張って
『や、祈織さん、引っ張っんないで』
『ごめんごめん』
と、皮を剥いてシャワーを当てると
つむはビクッと腰を震わせた
『なに?』
『そこ、ビリビリするからそんなシャワー強くあてないで、』
『あぁ、ごめん』
シャワーを離してこしゅこしゅと手で洗ってやって
『ねえ、祈織さんっていつまでおねしょしてたの?』
『……ないしょ、』
『なんで?』
『恥ずかしいから』
『マスターはね、物心ついた頃からおねしょしたことないんだってえ、ずるいよね』
『へえ、』
『おれこの前うっかりマスターにおねしょした事言っちゃってさあ、すげえ恥かいた』
『なんで言ったの?』
『うっかり口が滑った。あとなんかトイレギリギリになっちゃってパンツ濡らしたの見られてパンツも買ってきてもらっちゃった』
『へええ、どんまい』
『祈織さんはさ、外でおもらししちゃった時どうしてんの?』
『……おれはもうしないよ』
この前あいつの家で漏らしたけど。
よし、流し終わった、と
さっさと紬の身体を拭いてやる
『ふいぃ、気持ちよかった』
『そう、良かった』
『おれおもらししちゃうの悲しいけどこういう風にキレイにしてもらうのすき』
『そっか』
お前は正直だね、と頭を撫でてやると
ごろごろと猫みたいに擦り寄ってくる
ようやくリビングに行くと
つむはすぐにサイフォンに駆け寄る
『すっげえ、本当に買ってる』
『だってやっぱりサイフォンのコーヒーうまいじゃん?飲む?まだあんまり上手にいれられないけど』
『のむ!』
と、つむはいうから
すぐにサイフォンでお湯を沸かし始めた
『おれもバイトの終わりの時とか練習してんだけどねー、やっぱりマスターみたいに上手にいれられないんだぁ』
『やっぱり修行が足りないのかな』
と、おれがいれる所をつむはずっと見ていて
『あ、そこ、ヘラがフィルターに当たると濁るんだって』
『へえ、そうなんだ』
と、つむに言われた通り
ヘラがフィルターに当たらない様に気をつけながらいれてみると
いつもよりなんとなくキレイなコーヒーがいれられた
匂いもいいかも
『え、祈織さん上手くない?なんで?』
『練習したし』
『へええ、すっげえ、』
『飲んでみて』
と、つむに出すと
ふぅふぅ、と息をふきかけてから
カップに口を付けた紬
『どう?』
『うん、おいしい』
『マスターのとどっちがおいしい?』
『…マスターのが、おいしいかな』
と、つむは何だか寂しそうな顔で笑った
『まぁ、そりゃそうだよね』
一夕一朝でそんなマスターの味に適うはずがなかった
『でも、祈織さんがいれたコーヒーもおれ好きだよ』
『そっか、』
と、つむの頭を撫でてなんとなく気付いた
つむって、もうおれのこと好きじゃないんだ
『おれ、いっつもマスターに教えて貰いながらやってんだけどね、おれより祈織さんの方が上手だね?なんで?』
『言ったでしょ、おれ、米炊くのとコーヒーいれんのだけはできるって』
『あー、そっか』
唯一おれができることも
やっぱりプロにはかなわないけど
『つむ、』
『んー?どうしたの?』
『エッチしよ』
『は…、え!えっち!そ、そんな、きゅうに、』
『ばーか、冗談だよ』
と、つむのおでこにデコピンをした
『な、なんだよ、驚かせないでよ』
『ねえ、今度はつむがおれの為にコーヒーいれて』
『おれ、そんな上手く出来ないよ?』
『いいから。飲ませてよ。つむがおれの為にいれたコーヒーを』
『えっと、うん、頑張る』
と、つむはコーヒーを入れる準備を始めた
次、おれがつむに連絡した時は来てくれるのかな
また、おもらしして困ったらつむはおれに連絡してくるのかな。
おれじゃなくて、マスターの所に行くんじゃないのかな
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