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帰路(祈織)

熱は下がったけど 匡平に言われて改めて気付いた事がある おれ寂しいとおしっこ漏らすんだって 良く考えればおねしょ復活したのも 仕事やめるってなって不安定な時だし あいつの家出ていったあとも慣れるまでずっとおねしょしてた つむが出ていってからも増えてるし…… 熱出る時も増えるのは心細いからなのかな いや、でも普通に漏れるもんは漏れるし 寂しくなくてもおしっこぐらい漏れるし 「でさー、本当にまじでまじでもったいないことしちゃったんだよね、なんで寝落ちしちゃうかなーって」 と、あきらくんとあって この前の出張の感想を延々と聞かされていた 『なんか知んないけどあきらくん漏らしたんでしょ?』 「いや、漏らしてないよ?ちょっとチビってみただけ」 『なんで?あきらくんべつにそんな膀胱も弱くないしお酒も弱くないじゃん』 「いや、そうなんだけどね?なんだろうね?柳瀬さんと2人っきりって思うとめちゃくちゃ酒回っちゃって」 『それで漏らしたの?』 と、聞くとあきらくんはんー、と首を傾げて考える 「いや、違うね?漏らした…っていうかチビったのは半分くらいわざと?めちゃくちゃ酒回っちゃってやらかしたのはなんにもしないで柳瀬さんの前で寝落ちしてたとこかな?」 『あわよくばとか考えてたの?』 「なんか全然覚えてないんだけど起きたらオレおむつしてたんだよ!あれって柳瀬さんに付けられたのかな?すっげえもったいない事したと思わない?」 『……べつに。できれば忘れたい記憶じゃん、』 「そんなこと無いって!だって漏らしそうな時、柳瀬さんすっげえ心配してくれてね…おれのスーツもキレイにしてくれたし」 『きょうへ、……あいつに、ヤナギさんから連絡きたよ?おしっこチビったスーツどうやってきれいにすんのって』 「いやー、オレなんでねちゃったかなー……」 『…なんかあったの?』 「いや、覚えてないからこまってる」 『なにが?』 「オレなんかしたっぽいんだよね、柳瀬さんに」 『襲ったの?』 「……襲ったのかな?」 『ヤナギさんなんか言ってたの?』 「柳瀬さんが……オレに、柳瀬さんのこと好きなのって、聞いてきたんだよねえ」 『なにそれ、どうしたの?急に。なんか言ったんじゃないの?』 「かなぁ、覚えてないんだよねえ」 ほら飲みな、ともう飲みたくないに あきらくんは相変わらず勝手におれにお酒を飲ませてくる 今日も長くなるのかな、 この後あきらくんの家で飲み直すのかな 「さて、今日はそろそろ帰ろうか」 『……え?』 「なに?どったの?」 『いや、今日かえんの?』 「帰るよー。オレ明日早いし。今日はいおりんに優しくしてあげる気分じゃないし」 『え?あきらくんいつも優しくないじゃん』 「え?オレに優しくされてないつもりだったの?ずうずうしー。すげえ優しいじゃん。いっつもいおりんおもらししたら助けてあげてるし」 奢ってあげるよ、とあきらくんがお会計をしてくれて 『あきらくんよりおれ貯金あるけど』 「知ってるよ。社長のわんちゃんの頃なんも金使ってなかったもんね」 『でもごちそうさまー』 さてかえろー、いおりんタクシー?と着々と帰路に向かうあきらくん 『ええ?かえるの?本当に?』 「え?だから、帰るって」 『やだ、おれさびしい』 「さびしいっていおりんいつもオレが無理やり付き合わせてると泣くじゃん」 『だって、いつもそうなのに急に今日は帰るとかさびしいじゃん』 「……いおりん最近うさぎ並にさびさしがり屋だよね」 『……だって、』 「タクシー拾ってあげるから帰りな。ほら、タクシー乗る前におしっこしといで。いおりんきっと漏らすし」 『漏らさないから、』 でもいちおうトイレ行っとこ、と駅のトイレに入ると薄暗い上に誰もいなかった 『あきらくんいるー?』 と、トイレに入ってすぐにあきらくんを呼ぶ 「なに?」 『おしっこするからそこいて』 「え?なんで?見て欲しいの?」 『ちがうから…このトイレ薄暗くて苦手なの』 早くおしっこしちゃお、と思ったのに 「あ、ちょいまって」 と、あきらくんは光るスマホを持って出ていってしまったから ベルトを締めて急いで追いかけた どうやら仕事の電話が来たらしくて 飲んじゃったから無理と断っていた 「おお、いおりん。来てたの」 と、電話を切ってすぐにおれが戻って来てることに気付いて驚いたあきらくん 『あきらくん明日仕事何すんの』 「明日は朝からプレゼン行くけど」 『……ふーん。ヤナギさんと?』 「……そうだけど?」 『2人で行くんだろ』 「そうだけど…なに、」 『べつにい、あきらくんは明日ヤナギさんに朝から会うからおれの相手してくれないんだなっておもって』 「……いおりん酒飲むとおねしょするから朝から構ってらんないの。明日は。つかなんかいおりんめんどくさい女みたいになってるけど大丈夫?」 『………なってねえし』 「柳瀬さんに夢中でもオレはちゃんといおりんと友達だから安心して今日は帰っておむつ履いて寝なよ」 と、あきらくんはぽんぽんと俺の頭を撫でた 『なにそれ、』 「え?それが不安になったんじゃないの?」 『なに、不安って、』 「いおりんオレのこと垂らしこもうとしてたから」 『…してないよ、そんな事』 「まぁいいや、いい加減タクシー拾うよ?」 『まって、おしっこしてないって』 「なんでしてないの」 『あきらくん出てっちゃったじゃん』 「…いおりんもう30歳でしょ…いい加減おしっこぐらい1人でできるようになりなよ」 と、あきらくんは文句をいいながらも着いてきてくれて嬉しそうにおれのおしっこを手伝った 結局あきらくんだってずっと変態じゃねえか 性癖ってそう簡単に変わらないんだな バイバイ、とタクシーに乗るまであきらくんは送ってくれた 優しい、あきらくん。奢ってくれたし 『そういえばあきらくんいい事教えたげよっかあ』 優しいからおれも優しくしてあげよ 「なに?」 『ヤナギさんの言ってるあーちゃんね』 「うん、」 『あれヤナギさんの彼女じゃなくてわんちゃんだよ。ペット』 じゃあね、と言ってドアが閉まってタクシーは出発した 後ろからなんかあきらくんの叫び声みたいなの聞こえた気もしたけどまぁいいか なんかおれ今日人に優しくできたかも

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