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終始笑顔(柳瀬)
つか好きとか恋とかって
なんだっけ
社長の様子がおかしくて
どうやらここ最近のシバくんと連絡がついていないようでソワソワしていた
シバくんどうしたんだろ、と少し心配に思う気持ちと
どこか自分の中の冷めたところで
好きとか恋愛とか大変そうだな、と他人事の感想も出てくる
否定的な意見なんて言いたくないけど
俺は今のところ異性との恋愛も
苦労してきたし、結果的に上手くいかなかったんだろうし煩わしく思ってしまったから
今は恋愛を休んでいる
というのは少々格好付けで実際は出会いも無いし仕事してたらそれどころじゃないって感じなだけだけども。
それどこじゃないって思ってたけど…
男性が多いこの職場で
俺もなんと告白されたのだ
経理の女の子とかじゃなくて
おなじ男性社員のあきらくんに
いや、あれは告白と言えるのだろうか
わからないからとりあえず保留?スルーさせていただいていつも通り仕事をしていて
あきらくんもなんかいつも通りだし
だからそのままにしてる
そのままにしてはいるけど
俺が男と付き合うとか考えられないし
付き合ったとしてどっちって話
「ヤナギ、俺今日先帰るわ」
「あ、はい。どうしたんですか?」
「いや…シバがマジで居ねえんだよ」
「いない?会社とかじゃないんですか?」
「車は家に置いてあんのに帰ってこねえ」
「帰ってこねえって出張とかじゃなくて?」
「3日シバの家に帰ってんだけどあいつ居ねえ」
「は?」
いや、シバくんの家に3日帰ってるって社長正気か?
「それに妹に聞いたんだがあいつの会社今リモートだから家にいるはずなんだよ」
「連絡は?してないんですか?」
「いや、したけど繋がんねえ」
「それマジで大丈夫ですか?警察とか」
「いや、俺が避けられてるだけかもしんねえから」
「そんなことは無いと思いますけど、」
「とりあえずもうちょい探してみる」
「はい、何か手伝える事あったら言ってくださいね」
「あぁ、悪いなヤナギ」
「あ、あの子とかどうですか?あの志波くんの家に住んでたキャストの子。あの子ならなんか知ってるかも」
「あー、そっか、そうだな。うん、聞いてみる」
と、社長はいそいそと帰って行った
俺も今日ちょっと早く帰ろ
なんか疲れた
とりあえず今日の分はさっさと終わらせよ
と、伸びをした
その時だ
「あれ?社長は?」
と、後ろから焦った声が聞こえた
「社長ならたった今帰ったけど」
「あ、柳瀬さん、社長帰っちゃったんすか?」
「うん、急用」
「あー、書類間に合わなかったぁ…」
「え?どの書類?」
「これです、明日朝イチでつかうのに、」
「いいよ、俺が代理で預かっておくから」
「すみません、じゃあこれ」
と、あきらくんから書類を預かって
やることリストとして頭の片隅に入れておく
「そういえばあの子の連絡先とか知ってる?」
「あの子?」
「あの、志波くんの家に住んでた子」
「あー、知らないっす。いおりんなら知ってると思いますけど」
「志波くんと連絡取れないみたいだからあの子に聞きたいんだよね…」
「あー、社長まだ探してたんですか?いおりんの事」
「うん、連絡取れないし家にもいないって」
「ええ?やっぱりそこら辺で死んでるんじゃないんですか?」
「縁起でもない」
「だっていおりんそんな連絡取れないのおかしいですって」
いや、そうなのかな?
志波くんってそんなアグレッシブに連絡してくれるタイプには見えなかったけどな
むしろ普通に連絡とかめんどくさがりそう
「つむつむに連絡取ってみたんですか?」
「いや、まだ。多分社長知らないと思う、あの子の連絡先」
だから後でなんか契約の時の書類見て伝えようかなって思ってたけど
「あ、じゃあオレ伝えておきます」
「知ってるの?あの子の連絡先」
「いや。でもいおりんから聞いた話ですけど近くの喫茶店でバイトしてるらしいです。いおりんがよく行くフレンチトーストの所の」
「へえ、じゃあ頼もうかな」
「はい!柳瀬さんの役に立てて嬉しいです」
「いや、俺じゃなくて社長の役にたってるんじゃないかな」
「え、あー、そっか」
と、あきらくんは少し苦笑いをした
「あきらくんって俺の役に立ちたいの?」
「はい、もちろん!伝えたじゃないですか…オレ、柳瀬さんの事、」
「あー、いや、その話だけど…それって、」
「…本気ですよ。柳瀬さん、その話避けてるっぽいから言わないようにしてたけど」
「え、いや、そういう訳じゃ…仕事忙しくて…なんかそういうのあんまり考えてる暇なかったというか」
と、言った後に
しまったと気付く
いや、これすごい失礼な事を言ってしまった
せっかく告白?されたのに仕事でそれどころじゃないって、
そして、
「いや…ごめん、俺やっぱりあんまり考えられないというか…男相手って」
「…あー、そー、っすよね、うん。」
「ごめんね?あきらくんがどうとかじゃなくて」
「あ、いいです!いや、男同士って気持ち悪いですよね?ごめんなさい、変な気使わせちゃって」
「気持ち悪いとかは全然ないよ!ただ、考えられないだけ」
「あ、でも、気まずくなるのとか嫌なんで考えなくていいっす!今まで通りで」
「えっと…うん、ありがとう」
「あ、じゃあオレそろそろいきますね。送迎の時間なんで」
「うん、ありがとう、お願いします」
と、失礼しましたーとあきらくんは終始笑顔で出ていってしまった
申し訳ない言い方をした、
気を使わせてしまった
でも、やっぱり
好きとか恋とか
めんどくさいんだよなぁ
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