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中華(祈織)

2週間リモートで作業をしていたが いくらパソコンの資格を持っていたと言っても 会社の細かいシステムとかは 入社して2ヶ月ちょっとのおれには解りきらなくて上司の人と電話をしながら作業をしていた うわ、人と会話すんの久しぶりかも 「あー、それ。システム覚えんの分かりずらいからマニュアル渡さなかったっけ」 『マニュアル?…いや、いただいてないかと』 「え?まじ?すぐ送る」 と、言われメール画面にして待つが 『あれ、』 「どうした?送ったぞ」 『…いや、こな、あ』 「何?きた?」 『WiFi調子悪いみたいで』 「WiFi?ネット環境整えとけよ。リモート続くって言われてたんだから」 『…すみません、』 「どう悪いの?有線なら行けんの?」 『…有線、無くて、うち』 「は?つっかえね。どうすんの、」 『テザリングで、』 そんなこと言われたって急に繋がんなくなったんだもん、しょうがねえじゃんと 思いつつ どうにかしようと答えるが 「そんなんで賄えないだろ…志波くんの家ってどこだっけ」 『どこって、品川区の、』 「あー、じゃあ近いから家おいで」 『え、いや…そんな、迷惑かと』 「いや、WiFi使えなくて仕事できない方が迷惑だし。あと本来入社3ヶ月は研修中だから教えなきゃ行けないことまだまだあるしいい機会だからまとめて教えるから」 『…いえ、でも、…ご自宅、しらないです、』 「近いよ。すぐ住所送る」 と、社用メールで送られてきた住所を見ると本当に近くてタクシーで多分10分くらいだろう 『…わかりました、じゃあ、お伺いさせていただきます、』 「うん。支給のパソコンだけ持ってくればいいから」 流石に寝起きの頭とスウェットじゃ申し訳ないから髪を治し着替えて向かうことにして 財布もいいや、とスマホとパソコンだけ持って上司の家に向かう え、なんか買ってった方がいいかな、と カフェでコーヒーだけ買って タクシーで家の真ん前まで向かって オートロックで言われた部屋番号を押すと 無言でロックが開く 「いらっしゃい」 『あの、コーヒー、』 「おー、買ってきてくれたんだ」 『はい、』 「気効くじゃん。上がりな」 と、言われおじゃまします、と 小さい声で伝えて上がる 「早速分からないって言ってたところやるからまずはWiFi家ので繋いじゃって。そこのテーブル使っていいから」 『あ、はい、』 と、言われた通り仕事をする準備をして 早速作業にとりかかる ひとり暮らしなのかな、この人 急に来たのに部屋片付いてんな、おれの部屋今足の踏み場無いのに ◇◇ 「よし、とりあえずここまでにするか」 と、その声で画面から目を離すと目がシパシパした すげえ集中してやってた わかんなかったらすぐ聞けるからやりやすかったし 「どう?わかんないとこ解決できた?」 『はい、分かりやすかったです』 「おお、良かった」 『ありがとうございました』 つかすげえ長居しちゃった、 いつの間にか勤務時間終わってるし 「明日もおいで、まだ教えてないところあるから」 『いいんですか?』 「会社がリモート推奨してるからそんな大きな声じゃ言えないけど。やっぱりやりにくいと仕事嫌になんだろ」 『…はい、』 「よし、じゃあ駅まで送る」 『いや、そんな』 「俺も飯買いに行くから」 『…はい、』 「志波くんって一人暮らしだっけ」 『そうですけど、』 「じゃあ一緒に飯食って帰る?」 『いや、そんな、』 「うまい中華あんだよ、駅のとこ」 『中華、』 「好き?」 『好きです、小籠包』 「なに?小籠包食いたいの?」 『はい、』 「よし、じゃあ食いに行こ」 駅は近かったみたいで 5分くらいで駅前に付いた 「来る時見なかった?中華」 『あ、タクシーで来たんで』 「え?タクシーで来たのかよ?なんで?そんないそいだ?」 『いや、駐車場なかったら困ると思ったので、車で来て』 「は?車?電車でいいじゃん」 『…あー、電車、』 「なに?」 『すみません、電車苦手で』 「え?そうなの?電車苦手ってなに?」 『乗りなれてなくて』 「なんで?前の会社とか家近かったの?」 『前の会社も車通勤してました』 「まじかよ。金持ってんな。都内でマイカー」 『いや、そんな、』 「ついた、ここ」 と、駅からちょっと歩いたところの 小さな中華のお店に入っていく上司の人 おれこういうちいさいお店入ったことねえんだけど大丈夫かな、 「こんばんはー」 「お、いらっしゃい!空いてるとこ座ってください」 「はーい。空いてるとこだって。そこ、」 と、指さされた席が分からなくて キョロキョロとすると 「ほら、こっち」 と、腕を引かれ 隣同士と距離が近い 間の席に腰を下ろした先輩 「ほら、そこの前座んな」 『はい、』 せま、 つか、隣との距離ちか、 きょうへいとご飯行く時も あきらくんとごはん行く時も ほとんど個室とか広い席だし こんな隣の人と近いお店とかあんまり入らないな まぁファミレスとかなら個室じゃないけど、 「何飲む?ビールでいい?」 『あ、ビール、』 あんま好きじゃない、と言いたかったけど うん、と頷いた 「おじさん、とりあえず生2つ」 と、注文してくれて 「ほら、好きなの選びな」 と、メニューを出される 『え、小籠包、とはるまき、エビチリ』 「餃子は?食える?」 『食えます』 「ん。じゃあ適当にやった頼むな」 と、そのまま注文もしてくれる 「志波くんって普段何食ってんの?昼休みになったら消えるじゃん」 『適当に、タバコ吸えるとこ行ってます』 「会社も吸えるだろ?」 『…そうですけど、』 「志波くん会社に仲良くなった人とかいる?」 『…とくには、』 「まぁリモートも多いからなあ」 『…はい、』 いや、ふつうになんも話すこと無いだけだけど 「志波くんってなんで転職したの?経歴見たけどうちの前の会社、長かったみたいだし結構いいポジションだったんじゃないの?」 『自分で働きたくて』 「どういう意味?」 『…いや、前の会社、流されるまま、雇ってもらってたんで』 「へえ、別にそれでも良くね?」 『いや…そうなんですけど』 俺の場合、それじゃダメだったんだ 「お、来た、春巻き」 『春巻き、』 「食いな」 『はい、えっと。箸』 「箸はここ。なに、志波くんってこういう店来たことない?」 『あんまり、無いです』 「じゃあどんなとこ行ってんの?飲む時とか」 『…普通に、個室のとことか』 「へえ、ほら、食いな」 『ありがとうございます』 と、早速春巻きをいただくことにした 『…、』 「どう?うまいだろ?」 『うまいです、』 「ここの春巻きすげえ美味いんだよ。沢山食いな」 『はい』 あ、そういえば久しぶりにちゃんと飯食ったかも

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