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財布(志波)

仕事が終わる頃 洗濯も終わっておれの服が乾いた 「志波くんって自炊すんの?」 『いや、全く』 「俺もしねえんだよなあ。手料理とか食いたくなんない?」 『…あー、そうですね。たまに』 「なんか作れねえの?」 『え?おれがですか』 「うん」 『…ご飯炊けます』 「そんなん俺だってできるわ」 と、笑われてしまった 「カレー作んない?1人だと食いきれないから普段は作んないんだけど。男二人ならいけんだろ」 『今からですか?』 「あ、今日はさすがに用事ある?」 『いや、』 「じゃあ決定。作ろ」 と、2人でスーパーに行きカレーの材料を買う 「カレーぐらいなら俺作れるけど、志波くんカレーも作れない?」 『いや、まあ作った事はあるんですけど』 俺の作ったカレーより 匡平のつくったカレーの方がおいしい。 匡平はおれがつくったカレーもおいしいって食べるけど。 つむのカレーはちょっと辛かったな 辛くて苦手だった。つむには言わないけど 辛いの食う練習とか外食でしてみたけど食いきれなくて結局つむと交換してもらったな 「カレーは?なに口にする」 『辛口…かな、』 「辛口がいい?」 『はい、』 「んじゃそうしよ」 『いつもはなに口ですか?』 「んー、俺も辛口かな」 そういえば匡平もつむも辛口で作ってくれんのに なんで匡平の作ったやつの方が辛くないんだろ 「外ではたまにカレー食うけどやっぱり家で作る時と味違うよな」 『カレーってメーカーによって味違います?』 「さー、多少変わるんじゃね?」 『へぇ、』 「なんか好きなやつとかある?」 『いや、よくわかんないです』 「じゃあこれにしよ。今日特売みたいだし」 『はい』 なんでもいい、好きだし、カレー と、カレーの材料を全部カゴに入れた時 「あ、」 『どうかしました?』 「あれいる?普段使ってんだろ」 『何がですか?』 「おむつ?」 『…今は、使ってないです』 「へえ、テープと履くやつあんじゃん、どれ使ってんの?」 『……、一人の時は、履くやつですけど』 「へぇ、じゃあ履くやつにするか。体重何キロ?」 『え?要らないですよ、本当に』 「まぁまた今度飲んだ時とか家来るかもだろ?」 『いや…それは、』 「志波くん寝れない方がかわいそうだし」 『……いや、もう、お泊まりは』 「お泊まりって女子かよ。ほら、行くぞ」 と、先輩は先にお会計に行ってしまった おむつ履いてんの、言わなきゃ良かったな 恥ずかしいし、本当に ◇◇ 「志波くんご飯炊いて」 『あ、はい』 「どっから始めるか、カレー」 と、先輩の家にかえって早速カレー作りが始まった 先輩は野菜を洗いながら ぼーっと箱を見つめる 『まずは、たまねぎ』 「玉ねぎから?」 『はい、』 「へえ、タマネギね」 と、タマネギを剥き始めたからおれもご飯炊いたらお手伝いしようと ご飯を炊飯器にセットした 2人でカレーを作ったけど 2人ともあんまり料理は上手くなかったから 3時間くらいかかかった ようやくできた頃にはもう夜も遅い時間で途中でお腹はぐーぐーなっていた 『腹減った』 「志波くんすげえ腹なってんじゃん」 『お腹すいてたんで、』 「食お食お」 と、おれのぶんのカレーもお皿によそってくれる 2人してカレーを持って座ると 先輩は早速カレーを食べ始めて おれも、と 『いただきます』 と、カレーを食べ始める 上手にできたかな、 と、1口食った時だ 何やら視線を感じて顔を上げる 「へぇ、」 『え?なんですか、』 「いや、ちゃんといただきます言って偉いなって」 『ちょ、それ馬鹿にしてます?』 「いや、そうじゃなくて俺言わないで食い始めちゃったから」 『そうでしたっけ、』 「うん。普段からちゃんと言ってんの?」 『割かし』 「1人だと言わなくね?」 『…あー、そうかもです、…つか、』 「あぁ、やっぱり?」 『はい、…これ』 「すっげぇ辛くね?」 『辛い、無理、水欲しいです』 「水な、水水、」 と、すぐにペットボトルの水をくれて 開けてぐびぐび飲む 水飲んでも辛い、とベロを出すと 先輩と目が合って笑われる 「志波くんって犬みたいだな」 『犬?』 「あ、ごめん。変な意味じゃなくて」 『あー…よく、言われてました』 「よく言われた?…誰に」 『……いや、前の職場の人、』 帰ろうかなそろそろ、と カレーを食べきって立ち上がった 『辛かった、』 「コンビニ行こ。甘いもん食いたい」 『え、いや、そろそろ帰ります』 「うん、じゃあコンビニまで一緒に行く」 と、荷物をまとめて 『お世話になりました、』 と、先輩の家を出て 近くのコンビニまで一緒に歩く 「わかんない事あったらまた連絡して」 『あ、はい、』 「うん、じゃあね、」 『おれも、コンビニであまいの買ってきます』 と、コンビニに入って一緒に甘いものを選ぶ 『先輩、甘いの好きなんですか?』 「あぁ、人並に。志波くんは」 『これ好きです、もちロール』 と、それを持ってレジに向かおうとしたが 『あれ、』 「どうした?」 『いや、スマホ。充電切れてて』 「あー、電子マネー?一緒に買うから。それぐらい」 『…すみません』 と、一緒に買ってくれてお礼を言ってそれを受け取る 「志波くんさ、タクシーだっけ」 『はい、』 「財布持ってねえよな?」 『…はい、』 「泊まってけば。充電溜まるまで」 『…でも、』 「いいじゃん。いなよ、家に」 『…はい、泊まります、』 もうちょっとだけ、 もうちょっとだけ、この人の家にいてもいいのかな

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