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体温(祈織)

泊まってけば、充電溜まるまで そう言われて また泊まることにしてしまった 寂しいから家に帰りたくない あの散らかった1人の家に帰りたくない おれがそう思っているのと似てるのかも 先輩も、おれがここにいることを許してくれて だから また、依存しようとしていた 「志波くん、今日もソファーになっちゃうけどいい?明日は日中に布団干しておくから明日からは布団で寝れるようにするし」 『あ、はい、ソファーで、…明日から?』 「あー、ごめん。なんか何となく明日も泊まる気でいたわ」 『……いいんですか、』 「帰りたくねえの?家」 『…いや、』 「うん。好きなだけいなよ。俺も一人でいるより退屈じゃないし」 『迷惑、じゃ、』 「前も言ったけど俺、年の離れた弟いるんだよ。しかも他にも兄弟4人いて、6人兄弟の長男」 『へぇ、』 「だから、家に人いる方が自然」 『そうなん、ですね、』 「うん。志波くん暗かったけどこうやって一緒にいることで少し打ち解けてきたの嬉しいし」 『あ、りがとう、ございます…暗かった、』 「あーごめん、失礼だったよね。もう寝よ。俺寝室行くから。志波くんも好きなタイミングで寝な」 『ありがとうございます、』 と、2人ともお風呂も入ったしあとは寝るだけだった 実際おれはもう眠くて、 ソファでも十分寝れると思っていた でも、 おねしょ、するかもという不安が一瞬よぎる 今日も、昼間ちょっと寝ただけでもおねしょした、 夜ご飯カレーが辛くていっぱい水を飲んでしまった 流石に今日も徹夜するのは無理だと思うし 何よりまた仕事中に眠くなってしまう そして思い当たったのは カレーの買い出しに行った時に一緒に買ってきたもの 先輩は買ってきたあとはリビングの端っこに袋に入れたまま置きっぱなしにしていて 今もそこにある 念の為、使わなかったらそれでいい 迷惑かける方がいやだ、と それを1枚取りだしてトイレに向かった トイレで寝る前のおしっこを済ませてから パンツと借りているジャージをまとめて脱いで 持ってきたおむつに足を通す かっこ悪い、こんなの、恥ずかしいし誰にも見られたくない でも、やっぱり安心した ◇◇ カレーの匂い、する きょうへいの誕生日だからカレーを作ってきょうへいが帰ってくるのを待っていた 早く帰ってこないかな 誕生日なのに忘れて仕事入れるなんて きょうへいは自分に興味無さすぎる その時、きょうへいの声がして 『帰ってきた』 と、急いで玄関まで向かう 『帰ってきた』 「帰ってきたけど…ってなんかカレーみたいな匂いするけど」 『つくった』 「お前が!?」 『え、うん』 「できたの?」 『いちおう、』 「すっげえじゃん!おいで、」 と、靴を脱ぐとすぐに腕を広げたから その腕に飛びこむとぎゅっと強く抱きしめられる 『お、おおげさ、だし…まだ、味見もしてねえからうまいかもわかんねえし』 「どうしよ、すっげえ嬉しいんだけど」 『…おおげさ、だって、』 と、口ではそんなことしか言えないけど ぎゅっと抱きしめられたのが嬉しすぎて すんすん、と匂いを嗅いでいると じわり、と下半身が温かくなる感じがする 「……あ、」 『……え?』 「シバ、おしっこ、でちゃってるな」 『あ、』 なんで、と、 自分の濡れた下半身を見て悲しくなった せっかく、ここまでできたのに、 『んんん、』 くやしくて下を向くと ぐしぐしの頭をなでられた 「これ嬉ションか?まぁいいか、一緒に風呂はいろ」 よいしょ、とびしょ濡れのおれを持ち上げて そのままお風呂に向かう 『せっかく、できたのに、』 「シバ、俺、すっげえ嬉しいんだけど」 『……だから、言い過ぎだって、おれ……おもらし、したし』 「そんなのいちいち気にしねえって、一緒にキレイにしよ」 と、さっさと風呂につれていってくれた シャワーで流されると ようやく悲しいのが少しマシになった 悲しいけど、めちゃくちゃ幸せだったな、 何にも考えなくても、おれは匡平の事が好きで それが悪い事なんて思ってなかった 何か お尻が気持ち悪い、と もぞもぞとただ腰を揺らす 「あれ?志波くん起きてんの?やっぱりカレー辛かったから喉乾いたよな、俺も」 『んん、』 「寝てる?」 『おしり、』 「おしり?」 『きょうへ、』 「志波くん?」 きょうへい、 おれソファで寝ちゃったんだっけ、 きょうへいのベッド行きたい、でもその前に 『んん、きょ、おねしょ、』 「は?おねしょ?」 『んん、おねしょ』 がば、と毛布が捲られたのが分かるけど 目があかなくて寒い、と手を動かす 「濡れてない?」 『…んー、おむつ、かえて』 「おむつ…履いたの?」 『だって、』 「ええ?志波くん、起きな?大丈夫?」 『んんー、いっしょに、ねよ』 きょうへい、早くいっしょに寝よう、と 腕を伸ばすと 体温に触れてそれを手繰り寄せる なんだろ、なんかきょうへいと違う、 匡平、ぎゅってしてよ、 「俺は志波くんが思ってる人じゃないよ」 『んん、なに、』 なんの事、って思ったけど また直ぐに毛布をかけてくれて おむつ、濡れてんのになんで変えてくんないのって思ったけど やっぱり眠くてまたそのまま眠ってしまった

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