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鼻水(あきら)
なんだよ、いおりんのやつ
連絡ぐらいよこせよ
こっちは振られてんのに
話聞けよ
いおりんと連絡取れないことに八つ当たりをしていた
柳瀬さんに振られた
告ったあとも
柳瀬さんはいつも通りに接してくれていて
これ案外いけんじゃないかなって思ってたけど
ダメなもんはダメだった
あきらくんごめん
充電切れてた。生きてるよ
どうしたの?
と、翌日の昼前くらいに
LINEの返事がきて
やっぱり生きてんじゃん。社長心配しすぎと
思いながら
とりあえず無視して会社に行く準備を進めて
電車で返信する事にした
今日の夜あたり飲もうかな
いおりんと。今日は奢らせよー
「あ。しゃっちょー、おはようございます。いおりん生きてましたね」
「は?」
「え?いおりんから連絡来ませんでした?さっき来ましたよ、充電切れてたって」
「え?まじ?」
「…え?来てないですか?」
やべ。悪い事言った、と
とりあえず逃げる事にして
「そろそろ行かなきゃなー」
と、独り言を残して自分のディスクに向かった
そしてすぐに
社長に連絡してないの?
何やってんだよいおりん
と、追加でLINEを送った
オレなんかじゃなくてまずは社長に連絡だろと思ったけど
いおりんがそれをしないのは
何かしらの考えがあるのかもしれない
まぁいおりんバカだから何考えるか知らんけど
匡平にはもう連絡しない
と、馬鹿みたいな返信が来て
本当にいおりん馬鹿だなとため息がでる
そんな事出来るわけないじゃん
お互いあんなに必要としてんのに
オレと柳瀬さんと違って
明らかに2人はお互いが必要で
お互いがお互いのこと、大事で好きでたまらないくせに、と
そこまで考えたところで何やら視界が歪んでいることに気付く
え?うそ、オレ今泣いてんの?
と、目元を触るとたしかに濡れていて
驚いてすぐに涙を拭った
うそだろ、
なんで……
「気持ち悪、」
こんなんで泣くなんて
ありえないだろ
オレまじできもい
情けない、と
その場にしゃがみこむ
こんな泣いてる顔誰にも見せたくねえし
オレはいおりんと違ってグズグズ泣いたりしねえし、
いおりんと違って、
泣いても慰めてくれる人いねえし、
と、そんな事考えているせいか
涙は止まんなくなって
益々顔を上げられなくなる
「きもちわるいって、」
しかし、
「あきらくん?どうしたの?」
と、上から降ってきた声に
息を止めた
「気持ち悪いの?大丈夫?」
と、背中にそっと触れられた
「や、なせ、さん」
「うん、大丈夫?横になる」
違う、そうじゃない、
こんな所柳瀬さんに見せたくねえのに
いおりんじゃないんだから、オレは
「ち、」
違います、なんでもないです、と
言おうとしてんのに、
声が震えそうになって
口を抑えた
「大丈夫?吐きそう?ほら、ここに出していいよ」
と、近くのゴミ箱を手繰り寄せてくれるけど
柳瀬さんにそんな事されんのが辛すぎて
嬉しすぎて
「やなせさん、」
「え?泣くほどつら、」
と、柳瀬さんの言葉を最後まで聞かないで
隣にしゃがむ柳瀬さんに抱きついた
「え?ちょ、あきらくん」
「………どうしても、」
「なに、?」
「諦められなくて…」
「………告白、してくれたこと?」
「うん、柳瀬さん…オレの事、好きになって」
あぁ、オレ、こんなに柳瀬さんの事好きだったんだ
「…ごめんね、あきらくん」
「やです」
「やですって…言われても」
「考えられないんでしょ、考えてください」
「………想像できな、」
「想像してください」
「あきらくん、」
「…オレ、柳瀬さんの事好きなんです」
「うん、知ってるよ」
と、柳瀬さんが困った声を出したから
やってしまった、とそろりと離れると
「鼻水垂れてるよ」
と、近くのディスクに置いてあったティッシュを取ってくれる
「ティッシュ取ってくれるところも好きです」
と、ティッシュを受け取ってすぐに鼻をかんだ
オレせっかくイケメンなのに鼻水垂らしてたら台無しだし、
「考えられないんじゃなくて、考えて欲しいです」
「…うん、分かったから」
「お願いします、」
と、情けない所見せて恥ずかしいから
すぐに顔を逸らした
「ところで大丈夫?」
「…え?」
「気持ち悪いんでしょ?横になる?やっぱり帰る?今日は」
あー、勘違いさせてしまっていたんだった
「…気持ち悪いから、もうちょっとこうさせてください」
と、柳瀬さんに抱きつくと
よしよしと背中を撫でてくれる
「気持ち悪いなら床に座り込んでないで横になろうか」
「ここがいいです」
柳瀬さんの、腕の中がいい
「これじゃ仕事出来ないんだけどなー」
「柳瀬さんは働きすぎなんでもうちょっとサボっていいと思います」
「そんな事してたら回らないでしょ」
「…じゃあ。オレがもうちょっと頑張ります」
「あきらくんが?」
「はい、そしたら柳瀬さん、バンバンオレに仕事回してください」
「いや、そんな無理しなくても」
「無理じゃないっす。柳瀬さんが仕事回してくれたら、柳瀬さんといっぱい話せて嬉しいし、柳瀬さんが仕事の事ちょっとでも考えなくなったら、オレのこと考えてくれますよね」
「いや、それは」
そうと決まれば早速仕事、と
今まで要領よく、必要最低限しかしなかった仕事も、ちょっと頑張ってみることにした
つかいおりん辞めたせいじゃん
いおりん辞めたから柳瀬さんの仕事の量増えてるし。
オレが振られたのだって実質いおりんのせいじゃん、そうなってくると
もう今日は絶対いおりんにお酒奢らせよ
…そう言えばいおりん久しぶりになっちゃったけど元気かな、寂しがってたかな。
しょうがないから今日は沢山構ってあげよ
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