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贅沢(祈織)

「社長と会った?」 『…今置いてきたから家にいるけど』 「は?社長来てんのにオレのとこ来たの?」 『だって今日はあきらくんと約束してたじゃん』 「いやいやいや、それオレが後で社長に殺されるヤツじゃないの?」 『大丈夫だよ、あいつ犯罪はしないと思う』 「いや、そういう意味じゃなくて」 と、約束通りあきらくんが仕事のあとに 待ち合わせをしていて 匡平は帰らないから とりあえず家に置いてきたけど 絶対ちゃんと帰ってこいよとしつこいくらいに言われた 帰るし、おれの家なんだから 「つかいおりんなんで消えてたの?」 『別に消えてないけど。みんなが遊んでくれないだけじゃん』 「連絡取れなくなってたじゃん」 『誰からもしばらく連絡来なかったし。忘れてたくせに』 「いじけちゃったの?ごめんごめん」 『いじけてねえし』 スマホ充電してなかったのだって3日くらいじゃん タイミング悪かっただけだし 『つかあきらくんなんかあったの?今日ブスだけど』 「は?いおりんのせいじゃん。オレイケメンだし」 『おれなんかした?ごめん、おれ人の気持ちとかわかんないから。ごめん。嫌いにならないで』 「うわ、めんどくさ」 『…なんで、』 「そんなめんどくさいいおりんと友達でいられんのってまじでオレだけだよね」 『…あきらくん、すき』 「うざ」 あきらくんはまだ友達でいてくれるみたいで 少しだけ安心した 「いおりんが変なこと言うからじゃん」 『変なこと?』 「柳瀬さん、彼女いないって」 『え?うん。あー、告白したんだっけ。どうなったの?』 「振られたけど」 『うん、ふられたんだ』 「いおりんのせいだから」 『おれのせい?なんで?』 「…いおりんが仕事辞めたからじゃん」 よく分からなかった おれが仕事辞めたのとなんの関係があるのかなって もしかして、おれが仕事辞めたから 匡平とヤナギさん、ずっといっしょにいるのかなって思ったけど 「いおりんが仕事辞めたから、柳瀬さん忙しくなって…今、オレとの恋愛の事とか考えられないって」 『…ヤナギさんはいつも忙しいじゃん』 「でもいおりんが辞めたからもっと忙しくなった」 『そうだけど。あきらくん仕事に手抜くからじゃん』 「バレてた?」 『うん』 「だって。サボっては無いよ。頑張ってないだけ」 『知ってるよ。あきらくんはおれと違って要領いいもんな』 「うーん。まぁね。でも辞めよっかなって、それ」 『そうなの?』 「うん。柳瀬さんにかまって欲しいからオレが仕事ちょっとがんばって柳瀬さんと仲良くする時間作るんだー」 『振られたんじゃないの?』 「振られたからじゃん」 『振られたらもう終りじゃん』 「なんでいおりんそんな嫌なこと言うの?忙しく考えられないって言われてるからちょっとでも忙しくなくなったらオレの事考えられるでしょって話じゃん」 そんなん、わかんないじゃんっておれなら思うけど。 あきらくんに嫌われたくないから何も言わないことにした 「それに比べていおりんは贅沢だよね」 『何が?』 「社長、いおりんの事しか考えてなかったじゃん。仕事のこと考えられないくらいになってたし」 『昨日だけでしょ』 「一昨日も」 『ここ最近だけだろ』 「まぁここ最近は特にだけど昔からいおりんの事しか考えてねえじゃん」 『…おれが1人でちゃんと出来ないからだろ』 「うーん、まぁそれもあるけどそうじゃないじゃん」 『そうだろ、』 「そうじゃなくてふつうにラブラブな癖して贅沢コノヤローってオレは言ってんの」 『ラブラブじゃねえって言ってんじゃん』 「なんで?社長いおりんのこと好きだし、いおりんも社長の事好きだからそれで終わりで良くない?」 何言ってんのだよ、あきらくんはなんも分かってない 『だって匡平はおれのこと好きじゃないよ』 「なんでいつまでもそんなバカな事いうの?いおりんは」 『匡平、おれのこと好きって言ってくんないもん』 「言葉がなくても態度見りゃわかるじゃん」 『おれはわかんない』 「じゃあ聞いてみたらいいじゃん。おれのこと好きなの?好きなら言葉にしてって」 『…それで、違うって言われたらおれ、多分もう生きられないよ』 「いおりんバカも大概にした方がいいよ」 『おれそんなバカじゃないし。普通じゃん、振られんの怖いのなんて』 「オレは振られたけどね」 『そうだった、かわいそう』 「だから話戻るけどそれも全部いおりんのせいだって」 さっきまであきらくんに色々言われてたけど あきらくん振られて可哀想だなとしか思わなかった でも、一旦自分が振られる事を考えてから あきらくんが振られたって話をまた聞くと さっきまで可哀想だなとしか思わなかったのに なんだか急に悲しくなって おれのせいでって、余計悲しくなった 「何泣きそうな顔してんの。オレは慰めてあげないよ」 『…そんな顔してねえよ』 「つか見ててイライラすんだよ。2人とも好きなくせしていつまでたってもバカみたいにはっきりさせないし」 『それは…おれは好きだけど』 自信がなかった 「いおりんもさっさと告ってどうにかなれよ」 『…おれが、振られてどうにかなったらどうすんの、』 「うーん。傷の舐め合いぐらいはしてあげるよ」 『…へぇ、』 見捨てないんだ、 『おれ、聞いてみようかな、匡平に』 「聞く?」 『おれのこと好きって』 「うん、さっさとそうしな」 うん、帰ったら聞いてみる、

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