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機嫌(祈織)
まだ眠い、とゆっくり目を開けて時計を見ると
もう朝になっていて
手だけで匡平を探すけど隣に匡平は寝ていなかった
あれ、やっぱり夢だった?
昨日、匡平と話したの
匡平どこだろうと、リビングに向かうと
「起きたか。おはよう」
『おはよう』
「最近お前の家いたから食い物ねえや。どうする、祈織なんか食いたいなら一緒にどっか寄ってくか」
『あー、うん。適当にする。どうせ休みだし』
「そっか、じゃあ朝飯食って1回こっち戻るか。お前ここいるだろ?今日」
『匡平は仕事?』
「あぁ、ちょっと溜まってるから今日は早めに行く」
『帰ろうかな、1人でここいてもつまんないし』
「そっか、じゃあ飯食ったらお前の家送ってく」
『うん』
と、おれも顔を洗って外に出れるくらいの準備はした
つか、匡平昨日おれのこと好きって言った?
いや、気のせいかな
なんかいつも通りだし
おれは告白したからちょっと恥ずかしいのに、
匡平は本当にいつも通りで
今日も仕事だっていうし
もしかして………
おれの気のせいだった?
いや、夢とか
まじかよ、おれちょう図々しいじゃん
『匡平、』
と、準備する匡平の裾を引っ張ってみると
「どうした?おしっこ?あ、パンツの中出てたか?」
『……ちっがうし』
と、いつも通りというかなんというか
恋人らしい事なんてなんも言ってくれなくてイラッときた
なんだよ、おしっこって
おれ何歳だと思ってんだよ
ちゅうぐらいしろよ
恋人だろ、とそこまで考えたところでふと気づく
あれ、好きって言ったけど
それって恋人なの?
いや、付き合おうとか恋人になろうとか言ってないよな
「あー、そういえば」
と、匡平が何かを思い出したように言うから
忘れてたの思い出したのかと思って
『なに!』
と、すぐに顔を上げる
「え、いや。あきらくんが言ってたんだよな」
『…なに、』
「ちっげえし、の言い方。俺と祈織一緒だって」
『……ふーーん』
どうでもよ、心底どうでもよい
と、もう匡平に構ってもらうのは諦めて
ソファに寝転がる
やっぱり気のせいか夢だったんだ、昨日のは
「なに?まだ眠いか?眠いなら寝てるか?なんか食いたくなったら適当にUberとか出来るだろ」
『別に眠くないし食いたくもない』
「んだよ、機嫌悪いな。まだお眠なんだろ」
『ちっ、……ちがうから』
「じゃあどうした。二日酔いで体調悪いか?」
『ちがう』
「雨降りそうだし頭痛いか?」
『だから別に体調悪くないって』
「それならいいけど」
悪いのは体調じゃなくて機嫌だけだし
「祈織、」
『なに』
「もうすぐ家出るから着替えるなら着替えな」
『着替えない。帰って寝るだけだし』
「パンツは?替えなくていいか?」
『だからいらないって』
「どうした、何が嫌なんだよ」
『…べつに』
もういい、と言われた通り家を出れるように
顔を洗って歯磨きをはじめた
「フレンチトースト食いいこうか」
『つむ、いるかな』
「どうだろうなー」
『……おれ、つむに嫌われたから会えない』
「あぁ、俺もあいつのこと怒らせたな」
『あ、匡平つむに会いに行ったんだっけ、』
「あぁ、そうだな」
『何怒らせたの?』
「いや…それは…なんでもいいだろ。脳みそまで筋肉かよって言われたけど」
『つむなかなか』
確かに匡平は相変わらず筋肉だけどさ
脳みそ筋肉って、
『…っふ、』
「お、笑った」
『…なんだよ、』
「いや、せっかくキレイな顔してんのにお前今日ずっとぶすっとしてんだろ」
『…匡平、おれの顔好き?』
「いや。うん。なんだよ」
『寝起きの顔も?』
「あぁ、寝ぼけてかわいい顔してるしな」
『ふーん』
「なに?」
『べつに』
寝癖だけ直そ。
『匡平がこの顔好きならおれこの顔で良かったなーって』
「お前の顔はだいたいみんな好きだろ」
『んー。好きとかじゃないじゃん、みんなは』
「そうか?」
『顔がいいって言われるだけだし』
「だからお前の顔好きってことだろ?」
『ちがうよ、おれの顔好きって言ってくれんの匡平だけだよ』
匡平はおれの顔が好きなんだ、
そしたら昨日のもやっぱり夢じゃなかったのかな
顔だけでも匡平がおれのこと好きでいてくれるのは嬉しい
『匡平、ちゅう、行く前にキスして』
「なんだよ、急にすげえ甘えん坊だな」
『甘えん坊じゃねえし、ほら、キス』
と、匡平の襟元を引っ張ると
少しおれの頭を撫でてからキスしてくれる
『なぁ、匡平、』
「お前かわいすぎて仕事行きたくなくなってきた」
『行かなくていいのに』
「そういう訳にはいかないだろ」
『そうだよなぁ、ヤナギさん過労死するし』
「だよなあ」
あきらくんにもヤナギさん忙しくすると怒られるし
でも今日休んだら明日はまた仕事だし
おれもせっかく休みなのに匡平と一緒じゃなきゃつまんないな
「祈織、行こ」
と、匡平は本当にいつものように
おれの手を引いて立たせて
1歩前を歩いて玄関に向かった
あぁ、本当に会社行っちゃうんだ
当たり前だけど
『うん。行く』
と、おれも匡平について歩いていった
匡平がおれのこと好きって言ったの、やっぱりおれの聞き間違いだったのかな?
それか寝る前だったから忘れたのかな、
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