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足首(祈織)
結局、朝家まで送ってもらった以来匡平とも会ってなくて
休みじゃないから普通に仕事もあるし、
リモートも終わったから出社もしてて
なんだかんだ匡平と会えてない
LINEはちょっとするけど、
それだけで会えてないし
朝送ったLINEは既読になってたけど返事は返ってきてなくて
寂しい、とソファに横になった
匡平は寂しくないのかな
やっぱりおれのこと好きなんて夢だったんだ
仕事が終わってしばらくソファでごろごろしていたらいつの間にか寝てしまって
目が覚めてすぐに匡平から返事来てないか確かめたけどやっぱり来てなくて
寂しい、
おれは匡平に会いたい、とソファでもぞもぞと動いていたらソファから落ちて頭を打った
んだよ、だからスマホ嫌いなんだよ
連絡来るか来ないかずっと気になるし
もう知らん、と
ソファからずり落ちたままもう一度寝ようとしたけど体制が悪かったからか眠れなくて
更にイライラした
匡平の家行こと、起き上がって匡平の家に行く準備をした
明日休みだからこのまま匡平の家にいようと決めて
ほとんど何も持たずに家を出て車に乗り込んだ
匡平の家について駐車場に車を停めた時に気付いた
『匡平の車ないじゃん、』
え、今何時?まだ帰ってないのかよ
時計を見るともう0時を回っていて
少しだけ不安になる
エレベーターに乗って
早く匡平の部屋、とボタンを連打してたのに
1階で止まって誰かが乗ってくる、と
連打をやめた時だ
『あ、匡平じゃん』
「おお、祈織。どうした?」
『匡平車なかったじゃん』
「あぁ、酒飲んだからヤナギに送ってもらってきた」
『ふーん』
ということはヤナギさんとお酒飲んでたのかな
おれの事ほっといて
「つかお前こそどうしたんだよ、今日約束してたか?」
『してないけど』
会いたくなったから来ただけだし
「まぁいいか。この時間に来たってこと泊まってくだろ」
『…うん』
「元気ねえな、腹減ってんの?」
『匡平がLINE返してくれないから』
「ええ?返してなかっけ。あ、ほんとだ」
『別にいいけどさー』
ふーん、と部屋についてそのままソファに座ると
匡平もすぐ横に座ってくっついてくる
つか匡平声でかいしなんか、
『酒臭いって』
「まじ?ごめんごめん飲んできたから」
『…知ってるけど』
結構酔ってんのかな、
「祈織が会いに来てくれんの嬉しいからよ」
…酔ってるな、これは
『仕事?飲んでたの』
「いや、仕事終わりにちょっと行ってきただけ」
『ふーーん』
匡平そんな酔っ払ってること無いのに珍しい
ヤナギさんと2人だったからかな、仕事じゃなかったみたいだし
「お前なぁ、お前だってあきらくんとかと飲むだろ」
『なんも言ってないじゃん』
「ヤナギ絡むとお前すぐそうやっていじけるよな」
『だから別になんも言ってねえって』
「祈織」
『友達?ヤナギさんと匡平って』
「…そうだろ?友達か?いや、仕事仲間?」
『つむに聞いたんだけどさ』
「ん?なに?」
『友達ってエッチな事しないんだよ、普通』
「いや、知ってるけど」
『してない?』
「ヤナギと!?するわけねえだろ」
『…声でか』
さすが酔っ払いだな
「お前が変なこと言うから」
『匡平は知らないと思ってた』
「んだよそれ。当たり前だろ」
『だって匡平は昔からおれに手を出してたから』
「人聞き悪いな」
『だって』
「なんでそんな機嫌悪いの?」
『…酔っ払ってる匡平嫌い』
「酔ってねえって。ほら、祈織。キスしよ。機嫌直しな」
『酒臭いからやだって』
「んだよ、」
と、匡平は着替えに行ってしまって少し寂しくなり急いで追いかけて声をかけた
『匡平、』
「どうした?」
『お風呂、一緒に入りたい』
「いや、俺今日酒入ってるからシャワーで済まそうとしてたんだけど」
『ええ』
「ごめんって。今度な」
『…もうう、わかったよ』
先に風呂入っちゃお、と
仕方なく1人で風呂入ろうと
ほっといたら匡平寝ちゃいそうからおれもシャワーでさっさと済ませることにして
さっさとシャワーを済ませると
ボディソープを使い切ってしまったから
匡平酔っぱらいだからボディソープ出しておくか、と上の棚から取ろうと台に乗っかった
しかし、
バキッと嫌な音が足元からして
バランスが崩れた
『あっ!』
おちる、と咄嗟に足を地面に付いたが
それがいけなかったらしい
ピキっと地面に着いた足に痛みが走って
そのまま体制を保っていられず尻もちを付く
『いってぇー…』
「どうした?すげえ音したけど」
『…転んだ、落ちた』
「は?大丈夫か?」
『うん』
「なんか取ろうとした?」
『ボディソープ』
「あー、台壊れてるな、悪い、残り少なかったもんな」
匡平が腕を引いて立たせてくれて
立ち上がって地面に足を着いた瞬間だ
ピキっとまた先程と同じほうの足に痛みが走って
思わず座り込む
「どうした?痛くしたか?」
『んん、痛い、こっち』
「うわ、挫いたりしたんじゃねえの」
『わかんない』
「わかんないって…何やってんだよ。病院、ってこんな時間やってねえよな。どうするか…」
『怒んないでよ』
「怒ってねえけどさ、どうしよって」
『痛くなっちゃったんだからしょうがねえじゃん、怒られるのやだって』
「だから怒ってねえって」
と、匡平は言うけど
なんかいつもより声でかいから怒ってるみたいだし困らせてしまって悲しくなる
『もういい、ほっといて。ほっといたら治る』
と、洗濯機に捕まって立ち上がって
痛い方の足に体重をかけないように気を付けて
リビングに向かって歩くと匡平も着いてきて身体を支えてくれる
「祈織、怒ってねえって。ごめん。痛いよな、大丈夫か?」
『大丈夫だし、』
「でも歩けねえだろ」
『歩いてるし』
「引きずってるだろ」
『だからほっといてって』
「祈織」
『怒んないでよ!おれだって足痛くて悲しいのに』
「…ごめん、祈織。怒ってねえから、ソファまでとりあえず行こうな」
『…うん、』
情けない、また匡平困らせた、と涙が滲んでしまって匡平に見られないように顔を逸らす
「ごめんな、祈織」
『匡平は…悪くないし、』
ソファに腰を下ろすと
匡平は救急箱を持ってきてくれて
「どこ痛い?」
と、おれの足を触りながら確認してくれる
『足首、と膝のとこ、』
「とりあえず湿布貼っといて明日朝病院いこ」
『…うん、』
よしよし、と匡平は頭を撫でてくれて
よけい悲しくなった
おれ、今日何やってもうまくいかないな
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