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着替(祈織)

「祈織、起きな。病院いくぞ」 『んー、まだ眠いから後ででいい、』 「ダメだって、起きな」 『いたいのなおったし、』 横になってたら痛くないし それよりまだ眠い、と ごろごろベッドの上で転がっていると 匡平はおれから枕を取り上げた 「祈織。後でだと混むから」 『んんんんん、あー、匡平仕事?』 そっか、おれ休みだから普通に来たけど 匡平は今日仕事だったのかも それなら早く起きて連れてってもらわないと匡平が仕事に行けないか、とどうにか起き上がる 「…いや、休みだけど」 『いや、嘘ついてる間じゃん』 「いいんだよ、今日は打ち合わせとか無いし休むことにしたんだよね」 『いいの?平気?』 「平気だから休むんだよ」 起き上がったしもう起きるか、と ベッドから降りようとすると匡平は支えてくれて やっぱり地面に足をつくと痛くて一晩寝ても治ってくれてなかった 『匡平は昔からおれが具合悪かったりするとすぐ仕事休むよなあ』 「なんの事だよ」 『でも今日会社休んだっておれに言わなかったよな。普通に休みだけどっていつも言ってた』 「…休みだったんだよ」 『だからその間は嘘ついてる間だって』 「いいから起きろよ。顔洗いな」 『んー』 まだ眠いのにと思いながらも 部屋から出る時も匡平はずっとおれのことを支えてくれてゆっくり歩くから 心配しすぎだって、ゆっくりなら歩けんのに 確かに立ち上がるのとかちょっと苦労するけど 匡平に支えられて洗面台まで行くと 匡平は心配そうにずっと傍で立って見ていて そんな見られると顔洗いにくい、と匡平に言おうと匡平の顔を見ると匡平はこれだろ、とでも言うように水を出してくれる 『んだよ、別に手は動くから水出せるって』 と、過保護すぎる匡平に文句を言いながら顔をあらうとリビングに連れて行ってくれて ソファに座らされ 「なんか食ってくか?とりあえずお着替えだな。着替え出してくるからちょい待っててな」 『あ、…』 「どうした?」 『…なんでもない、』 と、本当は顔洗ってる時からおしっこしたくて 顔洗ったらトイレ行きたいと思ってたけど なんとなく言うタイミングを逃していた 匡平戻ってくる前に一人で行こ、とゆっくり立ち上がったら ビリッと足から痛みが走って思わず固まった 痛い、 匡平が傍にいてくれたからそんな気になんなかったけど1人になった瞬間 おれ、痛くてちゃんと歩けないんだって不安になった 『ん、』 じわ、と先っぽが湿った感じがしてびっくりして咄嗟に中心を抑えた 痛かったからちょっとでた、と情けない気持ちと 思っていた以上におしっこ行きたい事に気付いて 少し焦ってしまう 間に合うかな、不安が増してくる いつもなら間に合うけど、 片足に体重もかけられないし 壁とかつたいながらゆっくりしか歩けない、 昨日も夜中、ちゃんと歩けなくてトイレ失敗したんだ、 また、間に合わないかもしれない でも、とりあえず行くしかない、とゆっくりと歩き出すと 「どうした?」 と、おれの服を持って戻ってきた匡平がすぐに駆け寄って支えてくれる 『匡平、』 「なんだよ、情けない顔して。一人で嫌だった?」 『ちが、っ、トイレ、おしっこ』 「あぁ、おしっこ、悪い、連れてってなかったな」 と、匡平は背中を支えてくれてゆっくり歩き出すけど 匡平の顔を見て安心してしまったのか 『もう…、でちゃう、』 痛くない方の脚にも上手く力が入らなくなってその場に座り込んだ 「出ちゃう?我慢できない?」 『できない、』 「いいよ。おまえおむつ履いてるしそのまましちゃいな」 『やだ、起きてんのに、』 「じゃあゆっくりでいいからトイレ行こうな」 と、腕を引いて立たせてくれるけど 立ち上がった瞬間、 じょおお、と音を立てておしっこがこぼれて 情けなく前かがみのまま、ギュッと先っぽを握るとどうにかおしっこは止まった 『きょうへ、』 「大丈夫だから」 『…うん、』 ゆっくりしか歩けなくて 少し歩く度にじわ、じわ、とこぼれるけど どうにかトイレについて 匡平がスウェットとおむつを下ろしてくれて もうおもらしを始めているちんぽを取り出して トイレにむけてくれる じょぼじょぼっと恥ずかしい音を立てて 残ったおしっこをトイレに流せた 『きょうへい、』 「間に合ったな」 半分は間に合ってないけど、 情けない、 匡平は汚したところを拭いて片付けてくれた 『おむつ濡れた』 「うん、向こうでキレイにしよ」 『もう嫌になった』 「だから早く病院行こうな」 『…うん、わかったから』 ちゃんと行くよ、病院。 めんどくさいけど、痛いとなんもできなくてやだし、とソファに座るおれの下半身をサッサと脱がせて匡平はおむつの処理をはじめる 勝手にしないでほしいんだけもなぁ。おれ大人だし、匡平の恋人なのに 『なぁ、おむつやめろって』 「なにが?濡れてんだろ?」 『…だから、自分でできるって』 「脚痛いんだからできないだろ」 と、匡平はさっさとおれのちんぽ拭き始めて こんなん恋人のする事じゃないのに 『やだ』 「おむつ履いとこうか、また間に合わなかったら困るから」 『やだ。起きてんだからおむつ履かねえって』 「じゃあパンツにするから早めにトイレな。今早めに行かないと間に合わないから」 『…わかってるし』 と、匡平はパンツと言ったのに 中にパットをセットして履かせてきて でも失敗しない自信はなかったからそのまま甘んじて受け入れた 『……』 「よし、このままお着替えしちゃおうな」 何着せるかなーとさっき持ってきた服を並べ出すから 『…匡平、なんか楽しんでる?』 「何がだよ」 『おれのお着替え』 「別に?」 『…また犬にしようとしてないよね?』 「なんだよ、それ」 『なんも出来なかった飼い犬の頃思い出すから』 「なんだよ、それ。別に昔からお前はなんも出来なかった訳じゃないだろ?」 『…おれ、飼い犬じゃなくて匡平の恋人だからね?わかってる?』 おしっこ漏らしといてこんな事聞くのも恥ずかしいけどさ、 「わかってる、よ。わかってるからこうやって大事にしてんだろ?」 ほらバンザイと、上は自分で着替えられんのに 匡平に脱がされてシャツを着せられた わかってんならまぁいいけど。 『おれのお着替え楽しい?』 「あぁ、お前素直に言うこと聞いてかわいい」 『へぇえ』 「なんだよ、その反応」 『おれだいたい素直だよ』 「そうか?ズボンこれでいいか?柔らかいのがいいだろ」 『うん』 病院行くだけだしなんでもいい、とそのまま着せてもらって 着替え完了、立たせて、と手を伸ばすと 匡平がおれのことを支えて立たせてくれる なんも自分で出来なくてやだけど 匡平にかわいいって言われたしこうやって甘えられんのはちょっと悪くないなあ

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