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相談(祈織)
何かあったらすぐ連絡すること
あと念の為おむつだけしておこうな
昼休みには帰ってくるし、夜も出来るだけ早く帰ってくるから
と、匡平は言い残して仕事に行ってしまった
そんな心配しなくて大丈夫なのに
それにおむつなんて履きたくないし。
昨日から早めにトイレ行くようにしてるから失敗なんてしてねえし
まぁ、着替えんのめんどくさいから履いておくけどさ
おれだって今日は仕事だからそんな
仕事中はそんな動かないし
と、仕事の準備をはじめて
リビングに仕事スペースを確保する
wifi用の充電の線どこやったかな、
匡平の家も飛んでるけど念の為、と
持ってきた荷物を開ける
そういや匡平がおれの着替えとか出しといてくれてたな。昨日もお風呂入ろうとしたら持ってきた着替えはおれの着替えがいつも入っている所に既に片付けられていた。
過保護なんだよなあ。そんなん自分で出来るし
もうペットじゃなくて恋人だって事に気付いて欲しい
と、荷物をガサガサ漁っていると
奥にいれていた箱に気付く
そういえば、なんとなく持ってきたんだった
匡平から昔貰った、首輪…じゃなくて、指輪。
貰ってから、嬉しかったけど
なんとなくずっと指にははめないでいた
でも、恋人だから指にしていいかもしれない
そう思って、迷って、なんとなく持ってきた
いや、匡平からしたら、昔ペットに送った指輪なんて深い意味は無いかもしれない
でもおれは間違えなくあの時は嬉しかったし
あのときからずっと大事にしていた
まぁ、見ないようにしていた時期もあったけど……
と、そこまで考えた所で
匡平がおれの荷物を開けていた事を思い出す
うわ、この指輪持ってきたの見られたかな、、
いや。でもなんも言ってなかったし
気付かなかったかな…
恥ずかしいし重いって思われそうでやだな、
昔貰ったもの、ずっと持ってるなんて
おれと匡平は恋人になった、
多分。ちゃんと。
恋人になっても
おれ、まともに付き合ったことねえから
どうしたらいいかなんてよくわかんないし
どこまでが恋人ならいいのかもよくわかんない
でも、世間一般では重いのは嫌がられるっていうのはなんとなく知っていた
でもおれは多分、気を付けないとどんどん重くなると思う
匡平の事好きすぎるし、ずっとおれだけ好きだったのが今は両思いになったから嬉しいから仕方ない、と自分に言い訳をするぐらいにはすでに重い
そろそろおれの昼休みで
まぁリモートだからわりと自由なんだけど
匡平がおれの昼休みの時間に合わせて帰ってくるって言ってたから
時間を決めて伝えていた
そろそろ約束の時間だ、と
時計を見てちょっとソワソワしながら待っていると玄関が開く音がして
匡平帰ってきた、と本当は玄関まで行きたいけど
今日は足は痛いから視線だけリビングの扉に向けて待っていたけど
あんまりじっと見てたらずっと匡平待ってたのバレバレで恥ずかしいな、と視線を逸らした
はやくはやく、と仕事をしている振りして待っていると
ガチャりと扉が開く音がして
「いっおりーん、あきらーいーつだよー」
『…は?』
「お昼持ってきたよー」
『………は?なに?』
「だからお昼だって」
『…なんであきらくんきたの』
「社長まだ仕事抜けらんなくてさー、頼まれて代わりにオレが持ってきてあげたの」
『ふーーーん』
はい、ナポリタン、と
会社の近くのお店のナポリタンをテイクアウトしてきてくれた見たいで
2つだしてテーブルに広げる
『は?なに?あきらくんも食べてくの?』
「うん。腹減った」
『ふーーーん』
「なに?どうして不機嫌なの?」
『匡平帰ってくると思ってたのに』
わがまま言っても仕方ない、と
そのまま食べ出すとあきらくんも食べはじめた
「そういえばいおりん結局社長とどうなったの」
『……恋人になったけど』
「ええ、じゃあもうオレがいおりんにちょっかい出せないじゃん」
『あきらくん知らないと思うから教えてあげるよ』
「なに?」
『普通は友達ってエッチなことしないらしいよ』
「へえ。初耳」
やっぱり知らなかったんだ。
おれも知らなかったし仕方ないな、これは
『だからもうあきらくんとエッチな事しねえし』
「わかってるよ。でもいおりんはいいなあ。1人だけちゃっかり幸せになっちゃって」
『幸せ?』
「社長と恋人になれて幸せなんでしょ?」
『…今は脚、迷惑かけたからそんな幸せじゃない』
「そういうんじゃなくてさあ」
『なに?』
「恋人になったんでしょ?普段から幸せじゃん?」
『……まぁ、それは』
「例えば?」
『…例えばって、難しい』
「なんで?ふとした時に幸せなこと教えてよ、おすそ分け」
『…なんか、普通に、一緒にいて、優しくしてくれる時とか…あと足直ったあとのデートの約束とか』
「へぇえ」
と、あきらくんにニヤニヤされて恥ずかしくなる
なんだよ、聞いといてその反応
『…いいじゃん、別に。おれはそれだけで幸せだし』
「ぐちゃぐちゃ考えんのやめたの?」
『何を?』
「なんか前は普通の幸せとかいろいろ言ってたじゃん」
『普通の?あー、結婚とか』
「うん」
『…今は匡平といることが幸せだから考えたくないだけ』
「へぇえ」
『おい、またその反応』
「幸せそうで何より」
『幸せすぎるからおれ脚痛くしたのかも』
「なんで?バチが当たった的な?」
『うん』
「へぇえ、なんか偉そうなこと言ってるけど」
『別に偉そうじゃ、』
「口の周りオレンジだよ。ナポリタンで」
『…うるさ、』
しょうがないじゃん、ナポリタン食ってんだから、と
すぐに口を拭いて
拭いた紙はあきらくんに投げつける
「八つ当たりー」
『あきらくん意地悪なんだもん』
「ちょっと社長と会えなかっただけでそんなご機嫌ななめになるくせに、よく今まで我慢してたよね。社長の所に戻るの」
『…違うし、会えると思ったら会いたくなるじゃん?我慢できなくなるじゃん?』
「でたでたのろけ」
『惚気じゃないし、べつに』
「いいじゃん、惚気なよ。バチ当たったとか馬鹿な事言ってないでふつうに幸せ満喫してればいいじゃん」
『うーん、』
「おれも早く幸せになろ」
『あ、あきらくんはどうなの』
「うん。手応え感じてる」
『は?』
「仕事頑張るようになったら柳瀬さんと関わり増えて今度打ち合わせがてらご飯行く約束取り付けた」
『へええ、まじで』
「うん。だから泥酔させてお持ち帰って既成事実作る予定」
『…あきらくんは腐ってもあきらくんだな』
「いや、普通じゃん?」
あきらくんの普通は普通じゃないからなあ
普通の幸せとか相談する相手間違えてんのかな、おれ
でも、
『あきらくんは腐ってもあきらくんだけど、ヤナギさんにはそれぐらいの人の方が合いそうな気もするよね』
「ま、じで?」
『いや、なんとなくだけど』
「オレいけるかな?帰省事実、作ったらもういけるよね?」
『それはわかんねえけど』
「どうしよ、柳瀬さんとホテルってなったら」
『……あきらくんも口の周りオレンジでだせぇから拭いた方がいいよ』
と、おれの言葉は聞かないで
あきらくんは早速、
ホテルに近い雰囲気のいい飲み屋を探し出した
あきらくんもなんだかんだ本気なんだよなあ
おれと一緒にいる時はヤナギさんのこと好きって想像できない感じにぶっ飛んでるけど。
あきらくん楽しそう
そんなあきらくんを見ていると
やっぱり匡平に会いたくなってきた
今は同じ家に住んでるんだから
いつでも会えるってわかってるんだかど…
なんだよ、帰ってくるって言ってたから
楽しみにしてたのに
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