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保険証(祈織)
「祈織、病院行くぞ」
と、せっかく休みだから思う存分寝ていたのに
匡平に揺らされて起きる
んだよ、まだ寝たいんだ
『んだよ、うるさ、』
「うるさいじゃねえよ。今行かないと俺仕事だから連れてってやれねえぞ」
『んんんー、いい、まだねむいから後で』
と、匡平に背中を向けて毛布を頭まで被った
すると、今度は足元から毛布を捲られて
「お、おねしょしてねえ。じゃあ一旦起きてトイレだけいきな」
と、スウェットの中を確認されて恥ずかしくなる
『うっさい、ぱんつ見るなって』
「なんだよ、」
まだねむい
昨日ずっとゲームしてたし、まだねむい
『ほっといて、ねむい、』
「もう知らねえぞ」
なんだよ、知らねえって、
と、しばらく布団の中でもぞもぞしていて
でも匡平に起こされたからイマイチもう一度寝付けなくて
しばらくごろごろしてから
仕方なくなく起き上がる
仕方ない、起きるかと
起き上がって
リビングに向かってトイレに行った
『きょうへいー、』
起きたよ、ちゃんとトイレも行ったよ、と匡平を探すけどいなくて
寝起きは脚が痛い、とゆっくりと歩くけど
まだ脚が痛い
怪我してからもう2週間経って
今日は病院に行く日で
朝に匡平に連れて行ってもらう約束をしていた
匡平どこいったんだろ、と
『きょうへいー』
と、声をかけるが
返事がなくて
おかしいな、とソファに腰を下ろした
あれ、匡平もう仕事行っちゃったのかな、
なんで、病院連れてってくれるって言ってたのに
朝ごはん食べて一緒に行こうって話してたのに
おれが起きなかったから呆れて先行っちゃったのかな
もう先行くからな
と、匡平からLINEが入っていて
匡平仕事なのにおれ起きなかったから呆れられてしまった、ということに気づく
約束してたのに起きなかったから
どうしよう、病院も1人で行かなきゃいけないし、
おれ、1人で病院ほとんど行ったことないからどうすればいいかわかんないし
一気に不安になった
朝ごはんは
と、連絡をしてみたけど運転中なのか既読にもならなくて
落ち着かない
『匡平、』
どうしよ、怒ってるかも、やっぱり
どうしよう、とソファに座ってたら
Uberで適当に頼んどくから
しばらくしたら届くから。
俺午前中忙しいから返信返せない
と、匡平から返事がきて
余計不安になった
やっぱり怒ってる
おれわがままいうの全然治せないな
ずっと一緒に住んでなかったから
今まではちょっとわがまま言っても許してくれて好きって言ってくれたけど
このまま
一緒の家にいたらわがままいっぱいで言って
やっぱり好きじゃないってなるかもしれない
匡平に謝りに行こうかな、
いや、そんな事しても仕事してるから迷惑だし、
どうしようと考えて
そのまま顔を洗って出かける準備を始めた
出かける準備をするにも
やっぱり足が痛くて少し時間がかかってしまった
早く行こう、と思ったけど
ピンポンが鳴って
なんだよ、と出ると
Uberがきて匡平が頼んでくれた朝ご飯だった
朝ごはん、なんだろ、と中身を見ると
おにぎり2つとお味噌汁、
ホットのルイボスティーだった
和食珍しい、と思いながら
それを食べ始めるととおれのすきな明太子味のおにぎりとイカ天のおむすびだった
おれの好きなやつ頼んでくれたんだ
匡平、おれの事きらいになってないのかな
おれのこときらいになってないからおれの好きな食べものにしてくれたんだ、
いただきます、と1度ちゃんと座って
せっかく匡平が頼んでくれた朝ごはんを食べることにした
匡平、おれのこと好きでいてくれるから
わがまま言っても許してくれたのかな
よく考えたら、
おれも匡平にわがまま言われても
匡平の事嫌いになんかならないから
匡平も同じなのかもしれない。
食べたら1人で病院に行ってこよ
自分で行けるって、匡平に安心してもらお
おれもう大人だからちゃんと自分でできるし、
例えわがまま言っても匡平がおれのこと好きでいてくれるとしても
わがままで相変わらずなんも出来ないって思われるより
ちゃんと自分でできるって匡平にも見せたいし。
ごちそうさま、とお腹が満足したから
ちょっとだけ気持ちも落ち着いた
病院行くって、言おうかと思ったけど
忙しいって言ってたから連絡しないで行くことにした
そういや足怪我してからほとんど家から出てねえや。
病院行く時も匡平の車だったし外で松葉杖で歩くの歩きにくいし目立つのやだな、
やだから置いてこ、と松葉杖は持たないで家を出た
ゆっくりなら歩けるし
どうせ外出たらタクシーだし
保険証と診察券をちゃんと持って
病院に向かうことにした
早く足治んねえかなあ
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