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消毒(匡平)
祈織は昨日の夜遅くまでゲームをしていて
朝は起きなかった
仕事前に病院連れていくつもりだったが
まだ眠いと起きてこない祈織を
無理やり起こすのは可哀想で諦めた
今日祈織休みだし。
休みの日位はゆっくり寝かせてやりてえ
つか俺が忙しくて朝しか病院連れていく時間取れないからその時間に連れていこうとしたが
それはオレの都合に付き合わせているだけで
可哀想で予定を調整し午前中にさっさと仕事を終わらせて昼頃連れていこうと決めて会社に向かった
俺は午前中ちょっと忙しくなるけど祈織は寝てんだろ、と思ったが
思ったより早く祈織から連絡がきて
俺が起こしたせいで目を覚ましてしまったようだった
朝ごはんは、とメッセージで
朝ごはん食べて病院連れて行ってやる約束してたのに約束を破ってしまったことに罪悪感を感じた
かわいそうな事をした
ちゃんと顔を見ておはようも言ってねえし、今日
せめてもの償いで
祈織の好きな食べ物をUberで注文した
昼には帰るから
朝ごはん食って二度寝でもして待ってて欲しい
いい加減、呆れられるかもしれない
転職してしっかり週2は休んでいる祈織の休日にまるで俺は合わせられなくて
祈織が休みの日でも午前中だけとか
夕方だけ仕事入れたりして
祈織のいう、ちゃんと恋人になったのに、
今祈織が足を怪我しているという事もあるが
まともに2人で出かけてねえし
せっかく付き合ってんだからデートでも連れて行ってやりてえのに全く思うように行かない
だいたい祈織が怪我したのも
俺が祈織を放置したからだし
大事にしてえのに全然うまくいかねえな
とりあえずさっさと仕事を終わらせて家に帰る
まずはそれが1番だと
午前中分の仕事はとりあえず終わらせて
急いで家に戻ったが
家には鍵がかかっていて
「祈織ー」
と、呼んでも返事がなく
まだ寝てるのかとも思ったが
寝室にも祈織の姿はない
「あれ」
松葉杖はあるな?
やっぱり家にいんのかな、と思ってもう一度家の中を探しても祈織はいなくて
「どこ行ったんだよ」
連絡も特に来てねえし
予定とかあって出かけたのか?
どこ行ったんだよ、と連絡をしようか少し迷う
でも予定があってでかけたのであれば鬱陶しいよな?
どうすっか、と少しまよってたらドアが開く音がして祈織が帰ってきた
『あれ?匡平帰ってたの?』
「あぁ、とりあえず午前中の仕事後片付けたから、って、おまえ。手どうした。擦りむいてんじゃん」
『あぁ、転んだ。周り誰もいなくてよかった。恥ずかしかったし』
と、手のひらの擦りむいている所をあらって血を洗い落とす祈織
「おいおい、大丈夫か」
『たいしたことないって、それより、おれ』
「どこいってたんだよ、出かけたいなら俺戻ってくるまで待てばよかったろ。それに松葉杖も持たねえから転ぶんだよ」
『…帰ってくると思わなかったし』
「せめて連絡しろよ」
『忙しくて返信できないって言ってたじゃん』
「返信できなくても連絡入れといてくれたら後で見れたし」
『…別にどこいったっていいじゃん』
と、いじけてしまった祈織
そりゃそうだけどよ、松葉杖くらい持っていけよ
「…手、消毒するからそこ座ってな」
『…うん、』
と、言われた通りソファに腰を下ろしたが
ふん、と不機嫌な顔をしたままだ
救急箱から消毒と絆創膏を取り出し
祈織の手を取った
「ちょっと染みるかも」
『大丈夫、』
と、手のひらの傷を消毒していると
手の側面のところは青くなっていて
内出血をしていることに気付く
「どこで転んだ」
『家の……入口の、エントランスの階段のとこ』
「あそこか、痛かったな」
『…うん』
「なんで松葉杖持ってかなかったんだよ」
『めんどくさいし、目立つからやだった、じゃまだし』
「あぶねえだろ。それにどっか行きたいなら俺連れてくし」
『ちょっと転んだくらいで大袈裟なんだよ』
「ただでさえ脚怪我してんだらかあぶねえって話してんだよ、俺は」
『………病院、1人で行けたんだけど』
「病院?行ったのか?」
『うん』
と、顔を挙げて見てくるから
「一人で行くのあぶねえだろ。現に転んでるし」
と、絆創膏を貼って言ってやるとまた不貞腐れた顔をしてしまった
なんか間違えたか、俺
『1人で行けたのに、なんで褒めてくんねえの?匡平忙しいから自分で行ったのに、』
「……悪い、」
『謝って欲しいんじゃねえのに』
と、祈織にそこまで言わせて
ようやく不機嫌な顔をしていた理由に気付いた
「祈織、病院どうだった、わかんなくなかった?」
『…うん、匡平と行った時と同じだし』
「先生なんて言ってた?」
『クセになると困るからもうしばらくちゃんと固定するって』
「そっか、なんか治療したか?」
『電気流した、』
「あ、保険証とかちゃんと持ってったか?」
『あたりまえじゃん、それくらい知ってる』
「大人だもんな」
『うん、』
「祈織、ありがとうな」
『なにが、』
「俺忙しいくて焦ってお前置いてったのにちゃんと自分で出来て偉かったな」
と、頭を撫でると
『子ども扱いすんな』
と、口では言うが
これは嫌がってないなと判断し
「こっちおいで、青くなってるとこ湿布貼るから」
『うん』
と、祈織を隣に座らせて
頭を撫でてやるとすりすりとくっついてくる
あーかわいい。
午後会社戻るのやめよ
『大人だからもう1人で病院もいけるし…めんどくさいって思わないで』
「思わねえよ、そんなこと。だから怪我してんのに勝手にどっか行くな、心配するから」
『うん、わかった。ちゃんと連絡するから』
「…お前こそめんどくさくないか?こういうのってやっぱり束縛っぽいだろ」
『もっとしていいよ、匡平なら』
と、俺を安心させる言葉を言った祈織
「ありがとな、」
『匡平なら束縛いっぱいしていいけど、おれも大人だから1人でも大丈夫って言うのだけ分かっといて。そうじゃないと匡平がおれのこと負担になるから』
「ならねえって、そんなの」
『今は大丈夫でもこれから先の話だから』
「これからもならねえよ」
なんだよ、そんなんなる訳ないだろ
『これからって、これからずっとの事話してんだし、おれは。ずっとだから覚えておくだけでいいから』
「ずっと?あぁ、分かってるよ」
と、頷いて頭を撫でてかは
昼ごはん食わせてやらなきゃなと立ち上がりキッチンまで準備に向かいながら祈織の言ったことを考えた
あぁ、ずっとって
そうか、これからずっとって
将来的な意味か
そこまでちゃんと考えてんのか、祈織も
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