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不満(匡平)
最近気温が下がってそろそろ冬になるな、と感じたところでふと思い立った
「今度の年末年始、久しぶりに俺の実家一緒に行かないか?」
久しぶりに祈織がこっちの家に帰ってきていたからふと思いつき誘ってみた
そういや年末には足治ってもう自分の家帰ってるか
『いいの?』
「だって祈織も休みだろ?年末年始」
『休みだけど』
「じゃあこっちに残っててもお前実家帰らないだろうし、一緒に俺の実家行こ。みんな喜ぶと思うぞ」
1人で家で過ごすのも味気ないだろう
『…久しぶりだからちょっと緊張する』
「ミサとは会ってるじゃん」
『会ってるって偶然会った程度だよ』
「じゃあもうちょい近くなったら母さん達に言っとくから。なんか食いたいものある?」
『食いたいものかあ』
と、ちょっと頭を悩ませる祈織
『唐揚げ、』
「唐揚げな。あとお子様ランチしてもらうか」
『おれ大人だけど』
「お前あれ好きだろ」
『…好きだけど、』
他になんか食いたいものとかあるかな、と俺も少し考え、
「あ、祈織、すき」
『え!』
「え、すき焼きは?なんだよ、その反応」
『…すきやき、』
と、何故か反応した祈織に不思議に思いつつ
『すき焼き、うん、食べたい』
と、目を逸らしていった
「じゃあそれで頼んどく」
『…うん、』
いや、なんで不満そうなんだよと思いつつ
飯の話をしたついでに
「…昼飯、どうする、今日」
『なんでもいい』
と、聞いてみたがそこも不満そうだった
「ええ、なんでもいいが1番こまるんだよ、適当にすんぞ」
『適当でもいい、』
「ええ、あ、祈織、すき、」
『な、』
「…すき家はって、そこのじゃなくてちょっと遠くの牛丼、」
と、すき焼きの話したからすき家のすき焼き丼食いてえ、と聞いてみたがまたしても変な反応する
『…なんでもいいって』
と、何故か膨れてしまった祈織
なんだよ、すき焼き食いたくねえのかな
つか昼ごはん適当にしたのが嫌だったかな。
せっかく休みだしなんか作ってやろうかな
「祈織、すき焼き嫌いか?」
『…嫌いじゃない』
「じゃあお昼がすき家が嫌だった?」
『…違うし』
「なんだよ、何怒ってんだよ」
『匡平が変な期待させるからじゃん』
「期待?なんの事だ?」
『…もういい。なんでもねえし』
と、なんでもないと言いながら完全にへそを曲げてしまっていて
俺なんか期待させるような事言ったか、と少し考えて完全に思い当たってしまった
今祈織と俺の関係は恋人という言葉に当てはまっていた
改めて確認していて恋人同士なのに
いや、特に意識してなかったし
そんなつもりじゃなかった
実家に誘うって変な期待というか
変に緊張させんじゃねえのかな
久しぶりに一緒に帰るかぐらいの感じだったのに
俺そういうとこ鈍いんだよなあ…
「一緒に帰るの気まずかったら別に、いいけど…」
と、今更訂正してみるが
『別に気まずくないけど。なに、やっぱりやめとく?』
「いや、お前嫌じゃねえなら」
ここは言っておくべきか?
特に深い意味はねえって
いや、それもそれでわざわざ訂正するのも余計怪しいよな?
『こた元気かなー、何歳だっけ』
「虎太郎、えー、10歳だったか?」
『え、でか。いつの間に』
「いつの間にって祈織、お前もう30だろ」
『ええ、うん。そうだけど』
「そりゃ虎太郎も10歳になるって」
『時の流れこわ』
そういやこいつ出ていっていつの間にか5年くらい経ってるんだよなあ
『そういや匡平もうすぐ誕生日じゃん』
「あぁ、そっか、そうだな」
『どっかいく?おれそろそろ脚も大丈夫だしお出かけできるよ』
「そうだな、じゃあ休み調整しとく」
『うん、どこ行く?』
「うーん、祈織どっか行きたいとこあるか?」
『匡平の誕生日だろ』
「あ、カレー。作って」
『ええ、匡平おれのカレーまだ食べたいの?』
「お前が俺の為になんかしてくれんのが嬉しいんだよ」
昔から俺の誕生日は家で過ごしてたよな
まぁわざわざ休みとかにしてなかったし
そういえば、俺の誕生日が近くなると
気温が下がるから祈織のおねしょやおもらしが増えてたな
最近はそんな事が無いようで大人になったなと変なところで感心してしまう
『嫌なこと考えただろ、匡平』
「なんの事だよ」
『目が余計なこと考えてた』
「いや、大人になったなって」
『そうだろ、そりゃ』
まぁいいか、と祈織もカレーかーとつぶやきながら何やらスマホをいじる
『ねえ、匡平が好きなところ行こうよ。あ、織田信長コラボイベやってるって。』
「信長がイベントすんのかよ」
『おれよくわかんねえけど歴史すきじゃん、匡平』
「いや、お前わかんないのに行っても楽しくないだろ」
『匡平の誕生日だから匡平が楽しかったらいいじゃん。夜はおれがカレー作ってあげるし』
「イベントってなにしてんの?」
『展示とー、グッズ売ってるのとあとコラボフード?』
「へえ、楽しいのか?そういうの俺行ったことねえ」
『おれ前つむぎとコナンのやつ行ったけどたのしかったよ』
「お前コナン好きだもんな」
『匡平の誕生日の日チケット予約しとくよ?』
「あぁ、ありがとう」
そういうの楽しいのかわかんねえけど
祈織とじゃないとそういう所も行かないから悪くないかもな
とりあえず誕生日は休みにしないといけないという事は俺の中で確定した
そういや最近誕生日も毎年仕事だったからとくになんもなく歳とってたよなあ
家族からおめでとうのメッセージとかヤナギからプレゼント貰ったりはしてたけど
そういや祈織は去年までわかっててスルーしてんのが丸わかりで面白かったな
なんか言いたそうな顔してこっちみてくるのになんも言わなくて、プレゼントの代わりかなんか知らねえけどコーヒー買ってきたりしてくれてたよな
そういえばそれで思い出したが
昔俺がプレゼントした指輪、あいつ持ってきてたよな
付けてるのは見てねえけど
「なぁ、祈織」
『んー、なに?』
「お前さ、指輪持ってきてたろ」
『んー、ゆび、あ、!え?見た?』
「…あぁ、お前の荷物片付けた時に」
『勝手に人の荷物見るなよ』
「おまえがさっさと片付けないのが悪い」
『…むかつく』
「なんで持ってきた?」
『…大事なものだから………こっちの家にいるのに向こうに置きっぱなしにしたくなかった』
「へえぇ、」
『なんだよ、その反応』
「いや、かわいいなあって」
『バカにすんな』
「バカにしてねえって。付けねえの?」
『……付けていいの?』
「……あー、」
いや、また深く考えないで言ったな今
そっか、もう指輪ってそういう意味含まれんのか
まじで俺なんも考えてねえよな
祈織は色々考えてるのに
「あれはクリスマスのプレゼントであげたやつだろ?」
『おれは匡平に貰ったプレゼント、大事なものだし、付けるの嬉しいよ』
「じゃあ、今は付けるならそういう意味だけでつけといて。あげた時の俺の感情、そういう意味だから」
『?うん、わかった?』
と、首を傾げた祈織
いや、そうだよな、俺も自分が何言ってるかよくわかんねえけど
まだあの指輪にはそれ以上の意味を持たせるのは早いというかあの指輪には荷が重い
『…恥ずかしいから、明日から、付ける』
「無理に付けなくてもいいけど」
『…無理にじゃないけど、なんか恥ずかしい』
なんだよその顔、かわいすぎんだろ。
実家連れて帰るのも、
プレゼントの指輪も
一緒に住んでいた頃は、祈織が犬だった頃は、
そこまで深い意味はなかったが
やっぱり、俺らの関係の名前が変わると
そういう所まで変わってくんのか
もうちょいしっかり考えなきゃダメだな、俺
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