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確認(匡平)

『んんん、だるい、起きんのだるい』 と、朝からベッドでもぞもぞしてる祈織 今日は休みだと言うのにアラームをかけていて 元から起きるつもりだったらしいが 「そんな早くから家帰んなくていいんじゃねえの?」 『やることあるし、』 と、まだもぞもぞしながら答えた 今日は祈織が自分の家に帰る日だった 『おれのものおおくなったし、せまいかなあ』 と、ほぼ寝ぼけながら何かをもぞもぞと呟いたが、何を言っているかよく分からなかったからとりあえず頭を撫でておく 『んんんー、起きたくない』 別に夜帰ればいいんじゃねえのかなあ? 俺も今日は少しだけ仕事だが早く帰って来れるし 「せっかく俺今日早く帰ってくるんだけどなあ」 『夜にはおれもこっち戻るよ』 「は?そうなの?」 『うん。匡平と寝たいし、明日匡平の誕生日じゃん』 おきよ、と身体を起こして そのまま直ぐに電子タバコを吸い出した祈織 「いや、それなら帰らなくていいんじゃねえの、今日」 『やる事あるし。今日逃したらなかなか時間取れないって』 「そっか、じゃあまた後でだな」 『うん』 おきよ、と祈織はようやく動くきになったようで 立たせて、と手を伸ばしてくる 『きょうの夜はお家でご飯食お』 「うん、何食いたいの?」 『なべ』 「あー。確かに寒いからいいな。しようか」 『うん』 ◇◇ 鍋か、と祈織の好きなトマト鍋の具材を揃え家に帰るが祈織はまだ帰っていなく 玄関の電気がついていなかった 何時頃帰るか連絡を取ろうとしたが 玄関のすぐ外の廊下から足音がする 祈織かな、とドアを開けた 『あっ、きょ、』 「おう、おかえり。俺も今帰った。トマト鍋にしようとしてんだけど…ってどうした?」 と、玄関で靴を脱ぎながら伝えると 祈織がばたばたと靴を脱いで俺をどかそうとしてくるのがわかる 『う、え、っと、』 「どうした?」 『どいてっ、』 「あぁ、うん?」 『おしっこ!』 と、ばたばたと足踏みして言うからようやく気付く あぁ、おしっこ我慢しながら帰ってきたのか、と すぐに避けてやるが 『んんっ、くつ、ぬげな、』 と、もじもじと自分の中心を抑えながら 靴が脱げなくてじたばたとその場で足踏みをするから 「ほら、祈織。靴ぬがしてやるから落ち着きな」 『っ、だって、もうっ、もれちゃ、っ』 と、情けない声を出すから 靴を抑えて脱がせてやるとばたばたとトイレに向かう なんでそんなギリギリまで我慢して帰ってきてんだよ、と呆れてしまう 『あ』 と、トイレの前で祈織が動きを止めた 「え、」 そしてぴちゃぴちゃ、と水の音がしたと思うと 一気に水たまりを広げ ばちゃばちゃと水の音を大きくする 「あー」 『あっ、でちゃっ、』 「出ちゃったな。タオル持ってくるから動くなよ」 水たまりを広げる、と 祈織の頭を撫でてからタオルを取りに向かう 大人になったと思ってたがやっぱりまだ間に合わない事あるなぁ この前も脚を怪我していたせいもあるとはいえ失敗してたし 『…匡平がじゃましたからまにあわなかったじゃん、』 「お前ん家から帰ってきたんだろ、トイレ行ってから帰ってくれば良かったろ」 『…だって。間に合うと思ってたし』 「間に合ってない。最近急に気温落ちたしまだ早く歩くのも出来ないんだし早めにトイレ行け」 拭いてやろ、と、足元にタオルを落としてやってからズボンを脱がして拭いてやる そこまでするとちょっと落ち着いたのか 『…ごめんなさい』 と、しょんぼりしたまま謝ってくる 「先に風呂入ろうか」 『…うん、』 と、頷いたのを確認し 腰にタオルを巻いてパンツもぬがしてやる あーあ、せっかくのブランドパンツもぐしょぐしょになってるな 「行っといで」 『匡平は、』 「俺はここ片付けるから」 『…うん、』 と、しょぼんとしたまま風呂に向かうから もっと甘やかしてやれば良かったと少し後悔する いや、でも不注意でのおもらしだしなあ 片付けをだいたい終え 手を洗ってからタバコを吸いながら思わず呟いた 「おもらし治んねえなあ…」 まぁしょうがないけど 今更急いて治せなんて事は思わないが祈織が気にしているからなあ 『匡平、』 「ああ、風呂出た?」 『うん…ごめんなさい、』 「あぁ、いいよ。俺も先風呂入っちゃうからメシちょっと待てるか?」 『うん。待てる、』 「ちょっと待っててなー」 と、頭を撫でてやるが 『…ごめん。おれ匡平のせいにしたし、』 「ん?あぁ、そんなん別に」 『大人なのに、おもらし、ごめん、早く治すから』 「…聞いてたか?」 『…聞こえただけ』 「違うぞ、べつに。気にしてねえから」 失敗した、と急いで訂正したが それでも祈織はしょぼんとして下を向いていた 「ちゃんと温まったか?」 『シャワーだけ、』 おいで、と、手を引いてソファに座らせる 手、冷たくなってんな 「おもらし、別に治さなくていいぞ」 『治るし』 「治るならそれでいいけど」 『これからずっと一緒にいるんだよ?おもらし、いやだろ』 「別に嫌じゃねえよ」 『そんな訳ねえじゃん…それに、おねしょも、……まだ、たまにする、』 「へえ、おねしょするんだ」 『…たまに、』 「そっか、じゃあ一緒にいてやらないとなあ」 『いやじゃねえの、』 「祈織おねしょすると泣いちゃうだろ」 『泣かねえし。それにたまにだって』 「うん。だからおもらしもおねしょもした時は俺が一緒にいた方がいいだろ?」 『匡平、おれのこと甘やかしすぎ』 「しょうがねえだろ」 『好きだから?おれのこと』 「…あぁ、そうだよ」 『おれ大人だから、もうすぐおもらししなくなるから、ずっと好きでいて』 「だから、心配しなくても大丈夫だって。俺も風呂はいってくるから。ご飯まっててな」 『………うん』 と、不服そうな、不安そうな顔をして頷く祈織 別に気にしてねえのも本音だし、 そんなわざわざ心配して確認しなくてもずっと好きなのにな。どうしたら信じてるくれんだ?

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