70 / 80

洗濯(祈織)

なんか冷たくて気持ち悪い、とモゾモゾうごいて誤魔化そうとしたけど 気持ち悪くて寝てられなくて目を覚ます 『…うわ』 これって、とスウェットの中に手を入れると 寝る前に泣いている間に履かされていたおねしょパンツが役割を果たしていて ぐじゅぐじゅになっていた 最悪、 変えてもらおうかな、と匡平を起こそうとしたけど 今日は匡平の誕生日だから、と そのままこっそりベッドをぬけて 仕方なく1人でシャワーを浴びてパンツを履き替えた よかった、パンツから溢れてなくて さて、問題は汚れてしまったおねしょパンツだ 後でこっそり洗おうととりあえずバケツに入れて水に付けて洗剤を入れておく これは隠しておこう、とバケツはそのまま棚の下に隠してベッドに戻ることにした ◇◇ 「祈織、おはよう。そろそろ起きるぞ」 と、匡平に揺らされて目を覚ました おねしょして一旦起きたからまだねむい、と ゴロゴロとその場で寝返りをうつけど 今日は匡平の誕生日だから起きることにした 『匡平、誕生日おめでとう』 「いきなりそれかよ」 『だって』 「ありがとう」 と、匡平は頭を撫でてくれて 起こして、と手を伸ばすと手を引いて立たせてくれる 『うん、』 今日は匡平とデートだ それを思い出して眠かったのにすぐに目が覚めた 『匡平』 「早いな、起きるの。まだしばらくゴロゴロしてると思ったぞ」 『匡平の誕生日じゃん』 「そうだな、ありがとな」 『今日の信長展お昼からチケット予約してるから』 「じゃあ間に合うように支度しないとな」 『うん』 たのしみだな、匡平とデート。 匡平の誕生日なのに匡平が朝からコーヒーを入れてくれて 俺の仕事なのに、と思いつつ食卓に座ってコーヒーを飲んだ 夜はおれがコーヒー入れてあげよ、 「つかお前、おねしょしたなら起こせば良かったろ」 『…は?』 と、びっくりしてコーヒーをこぼしそうになった 「棚の下にパンツ隠してたろ。お前むかしから変わんねえな。隠してもバレるんだから素直に言えよ」 『………変わんなくねえし、』 バレないと思ったんだよ 後で自分で洗濯できるから隠したのに 「後で洗濯回すの手間だから素直に言えよ」 言いたくねえから隠したんだろ 「まぁぐしょぐしょのパンツテレビの裏に隠してた頃からしたら成長したかもな。ちゃんと洗剤に付けてたし」 『…匡平に言いたくなかったんだろ』 「怒らねえよ、別に」 『怒られるとかそうじゃないし。もういい。うるさい』 と、ふんっとそっぽを向いてから やってしまったと気付く 「そっか、ごめんな」 と、匡平が頭を撫でてくれて申し訳なくなる おれが悪かったのに 匡平に謝らせてしまった 『きょう、』 ごめんなさい、と言おうとしたけど 洗濯が終わる音がして 匡平がすぐに洗濯機の所に行ってしまった 今から行って謝ろうかな でも、匡平がおれのこと子供扱いするからだし、 すぐに戻ってきた匡平は 洗濯物を干し始めて さっきおれが隠したパンツも 洗濯が終わったようで干してくれている 早く謝らなきゃ おれが悪いのに八つ当たりした、 どうしよう、なんて言おう そんな事を考えているうちに匡平は洗濯物を干し終わっていてマグカップに1/3くらい残ったコーヒーはぬるくなっていた 『きょうへい、』 はやく謝らなきゃと顔をあげると 匡平はすぐ近くに来てくれていておれの腕をつかんだ 「祈織、おしっこ行こうか」 『え?』 「おしっこ、起きてから行ってねえだろ」 『……おしっこ、』 「漏れちゃうぞ」 『うん、』 そうだ、おしっこ、行きたい 起きてからずっと行ってなかった また匡平に言われるまで気付かなかった 気付いた途端、先っぽに水が押し寄せる感じがして ぎゅぅ、と先っぽを握って出ないようにする 『でちゃう、』 「まだ間に合うだろ、行こうな」 『…うん』 と、ゆっくり立ち上がるけど 立ったから余計おしっこしたくなって その場でもじもじと脚を擦り合わせた やばい、出ちゃいそう 「出ちゃうか?」 『…だいじょうぶ、』 と、口では言うけど先っぽがじわり、と湿った 『、』 じたばたとその場で足踏みをすると 少しだけマシになって 急いでトイレにむかった 匡平がトイレのドアを開けてくれて そのままスウェットを下ろすのも手伝ってくれる 間に合った、とトイレにおしっこをじょぼじょぼと流しながらため息を吐いた 「パンツ濡れちゃったか。ちょうだい。洗っとくから」 『…うん』 と、濡れたパンツを渡すと 匡平は新しいパンツをすぐにくれた 「よし、手洗って出かける準備するか」 『…匡平、』 「どうした?」 『おねしょ、隠してごめん。言いたくなかったんだ』 「もういいよ」 『大人だから、自分で洗濯もできるから。そのパンツも自分で洗えるし』 「わかってるよ、そんな事。でも俺がお前に自分でさせたくねえってのもある」 『なんで。もうおれ自分で洗濯する方法もわかるよ』 「そうじゃなくてお前にさせたくないんだろ」 『だから、ちゃんと出来るって』 「わかってるよ、でもただでさえ失敗して落ち込んでんのに自分で洗濯させんのかわいそうじゃん。だから俺がやりてえんだけど」 『…わかってんの?』 「あぁ、わかってるよ、お前がちゃんと大人になってるって事くらい」 『…ふーん、』 「だから無理しなくていいんだよ。甘えとけ。大人だって甘える」 匡平は頭を撫でてくれた なんで匡平の誕生日なのになんでおれのこと甘やかしてんだよって感じだけど それ以上にちょっと嬉しくて 今日はいっぱい甘えてやろ、と思ってしまった

ともだちにシェアしよう!