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誕生日(祈織)
カレーも食べて風呂も入った
『あ、おれ匡平に誕生日プレゼントあったんだ』
「おお、何くれんの?」
『箱根旅行。予約しといた』
「は?お前が?」
『うん、来月だから予定開けといてね』
「なんで、旅行なら俺が連れてってやるのに」
『ええ、だって約束したけどなかなか一緒に行けなかったからおれ早く行きたかったんだもん』
「いや、確かになかなか予定合わせらんなかったけど」
『忙しいのもわかるけどさあ。こうしたら匡平仕事休みにしてくれるだろ?』
と、ここまで言ったところで気づいた
あれ、これ匡平の誕生日プレゼントだけどおれの方が嬉しいやつじゃん
『あ、物、欲しかったら用意する。旅行だったら匡平のがいい宿とか予約できたよね』
「物?」
『プレゼント、物のが良かったかなって』
「お前が考えてくれたんだからなんでも嬉しいよ。それに今日祈織が色々連れてってくれて俺のためにカレー作ってケーキ予約してくれたのも嬉しかったしな」
そんなこと言われたら本気で匡平が俺の事好きみたいじゃん、
『あ、ケーキまだ食ってないな、おれコーヒーいれてあげる』
「夜だから祈織はやめておけよー、寝れなくなるから」
『子供じゃないんだから平気だから』
「どーだか。それに、」
『それに?』
「…なんでもねえ。コーヒーいれて、祈織」
『うん』
まぁいいか、とそのままコーヒーをいれる事にした
『コーヒーできたよ』
と、伝えると
匡平はコーヒーを運んでくれたから
おれはケーキを用意して匡平の後をついて行く
『おれここのケーキすき』
「あぁ、知ってる、でも普段は食いたがらないよな」
『誕生日に食べたいじゃん』
「あぁ、そうだな、特別な時な」
『うん。でもあのお店の人に顔覚えられた』
「なんで?」
『誕生日ケーキですかって、聞かれた。プレートつけてくれたからいいけどさ』
匡平にはプレートを乗った方のケーキを差し出した
初めておれが買った時は
お誕生日おめでとう 飼い主へって書かれてたけど
今はちゃんと匡平って書いてもらってる
『そう言えばおれ昔匡平の名前知らなかったんだよなあ』
「な。お前1年くらい黙ってたろ。知らないのに」
『字は途中から知ってたよ。読めなかっただけ』
「最初久我さんって呼んでたよな、俺の事。可愛かったな、あの頃は」
と、懐かしむ匡平に少しモヤっとした
『久我さんって呼ぼうか』
「いや、なんかそれ距離感じるからやだ」
『でも久我さんって呼んでた頃が可愛かったんだろ』
「いや、そういう意味じゃなくて」
『じゃあ何が?』
「今思えばのでよそよそしくて可愛かったなって話」
『なんだよ、よそよそしい方がいいの?』
「なんて言うんだ?初々しい?」
『わかんね』
何言ってるかよくわかんないけど
相変わらずここのケーキは美味い
『匡平、あー』
と、口を開けると
匡平のケーキの上に乗っていた誕生日のチョコのプレートはおれに食べさせてくれる
「ほら、昔は食いたかったのに遠慮して食わなかったろ。『おれの誕生日じゃないから』って」
『匡平食いたかった?』
「いや、祈織が食いな」
確かに、そうだったかもしれないけど…
いいじゃん、おれチョコ好きだし。
食べてしまったチョコプレートはもうどうにもできないから忘れることにした
『匡平明日仕事だっけ』
「おー、祈織は?」
『仕事だけど明日は家でするからゆっくりできる』
「そう言えば祈織、次はいつ帰るんだ?仕事道具とか全部こっち持ってきてるんだっけ」
『帰る?何が?』
「お前の家。ずっとこっちにいる訳にも行かないだろ」
『え?』
「どうした?」
『匡平が言ったんじゃん』
「なにが?」
『戻ってくればって。だからおれもそうするって』
「んんんん?」
『だからおれも、来月までだったし、そうするって、?』
って話したのに、匡平はわからないと言う顔をした
忘れてたかな、最近忙しそうだし
「ああ、?お前の足、完全に治るの1ヶ月くらいかかるよなって、」
『いや、それもそうだけど』
おれの家の契約がちょうど来月までだからって、
だから、匡平が戻ってくればって、いってくれたから、?あれ、
「そうだよな?」
『………間違えた、帰る、おれ』
「は!?いや、別に必要なものとかないなら大丈夫だけどって、何、どうした。急に帰るって」
『だって、いや、ちょっと勘違いしてただけだし』
やべえ、おれすげえ勘違いした
また匡平と一緒に住めると思ったのに
どうやら匡平は怪我してる間不便だからこっちいればって事だったらしい、
やってしまった
恥ずかしい。おれだけまた勘違いしてんじゃん
幸いベッドとか家具もとりあえず実家のおれの部屋に送っておいたから今から急いで家探せばまだどうにかなるかも、
『と、りあえず、今日は、匡平と一緒に寝る予定だったからここにいてもいい?』
「あぁ、当たり前だろ」
『うん。今日は、匡平の誕生日だし、』
「別にお前がいいならずっとこっち、『あ』
やばいやばい、おれまた勘違いの迷惑やろうじゃん、やばい、どうしよう
「何?どうした」
『明日は、ここでリモートだった、あ、明日も、居ていい?』
「あぁ、問題ないけど、」
どうしよう、とりあえず明日休憩中とか仕事後とかに家探すしかないかな
おれだけ勘違いしてたなんて恥ずかしすぎる
よく考えたらおれはもう飼い犬じゃなくて匡平の恋人なんだ、
恋人が一緒に住むっていうのは、ペットが住ませてもらうとは違うんじゃないのかな、
こんな簡単に前みたいに戻ってきちゃ行けなかったんだ
いや、だって、恋人が一緒に住むって…
あれじゃん、期間とか決まって無いし…
そりゃそうだ、おれまじで考え足りないよな
もうちょいよく考えればよかった
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