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一息(匡平)
下行く、と祈織から連絡がきたから
駐車場で祈織が降りてくるのを待っていたが
なかなか降りてこず
心配になり部屋に向かうと
まず玄関には脱ぎ散らかした靴
そしてぽたぽたと廊下に水滴
そしてトイレの目の前で座り込む祈織と大きな水たまり
祈織がおもらしをして落ち込んでしまったから
出かけるのをやめて
Uberを頼んで
その後に一緒に風呂に入って
少し気持ちよくしてやって
だらだらと2人でソファーで過ごしていた
祈織は最初こそ泣いていてだいぶ落ち込んでいたがご飯を食べる頃には泣き止み
暫くは落ち込んではいたが風呂でだいぶ機嫌は治ったが
ソファに座っていても甘えっぱなしだった
まぁかわいいからいいけど。
『匡平、好き』
「なんだよ、急に」
『すきー、匡平好き。一緒にいたい』
「一緒にいるだろ、ほら、よしよし」
と、すりすりと擦り寄ってくるあたりがかわいくて仕方ない
よしよし、と甘えてくる祈織を撫でながら2人でテレビを見ていた
そろそろトイレ行かせた方がいいかな、
いや、わざわざ口出すとまた気にしてしまうか
『きょうへい、甘いものたべたい』
「甘いもの?」
『うん、なんか、あまいやつ、アイスとか食べたい』
「冷凍庫にあったよな」
『お昼に食っちゃった』
「じゃあねえだろ」
『食いたくなっちゃったんだもん』
「あ、そういやいいもんあった」
と、部屋の端っこに置きっぱなしだったものを思い出して取りに行く
『なに?』
「ヤナギにみかん貰ったんだよ、たくさん」
『みかん?はやくない?』
「そうだな、早い時期のみかんだよ。実家からもらってきたんだって」
『おれ食べていいの?』
「あぁ、ヤナギからシバにってたくさんもらってきた」
『やったー、食う。おれみかん食べるの久しぶり』
と、ソファから降りて早速みかんを剥き始めた祈織
やっぱりこいつフルーツ好きなんだよな
そういえば今年の夏はスイカも桃も梨も食べさせてやれなかったな
俺の家に住んでた頃は出してやると嬉しそうに食べてたっけ。
喜ぶからおいしいものを食わせようと何度か取り寄せてた事もあったな
ひとり暮らしだとこいつ自分で買わないからなあ
多分自分で剥けないし
それに夜食うとな…
『匡平、りんご飴の店あんの』
「りんご飴?屋台のやつ?」
『じゃなくて、りんご飴の店があんだよ』
「へえ、」
と、そこまで聞いて気付く
「食いたいの?」
『うん、匡平と一緒に食いたい』
「りんご飴なんて大人になってから食った記憶ねえよ」
『匡平が思ってる奴よりおいしいんだよ』
「食ったことあんのか?」
『うん、紬が買ってきた』
「さすが若者はそういうの知ってんだな」
『美味しかったから、匡平と一緒に食いたいんだ』
「ありがとな、じゃあ今度一緒に買いに行こうな」
『うん』
ちまちまと白いところを取りながらみかんをおいしそうに食べる祈織
「祈織、俺にもちょうだい」
『はい』
と、白い所をとったみかんをひとつくれる祈織
そして程なく食べおわり
もう一個たべよ、と嬉しそうに言うが
俺は少し心配になったが
祈織が嬉しそうだから黙って見ていることにした
『匡平、』
「どうした?」
『眠くなった』
みかんを食べて程なくして
眠そうに目を擦り出す祈織
「もう今日は寝るか?明日も仕事だったろ」
『うん、でも、仕事だから、準備しなきゃ、』
「準備?」
『パソコンとか、持ってくやつ、ある』
と、準備しなきゃいけないのは自分でもわかっているようだが
眠くてなかなか動けないのかそのまま動こうとしない祈織
「明日朝急いで準備すると忘れ物するぞ」
『んん、わかってるけど』
と、いいつつも完全に横になってしまった
眠そうだな、もう
「祈織、寝る前におしっこしに行こ。一緒に行くから」
『…うーん、わかってるけど、』
めんどくさいんだな
まぁ、いいか。今日は
どうせおむつで寝かせるつもりだったし
寝る前におむつだけ確かめようと濡れていないか確認をする
『なんで脱がせるの?エッチすんの、おれ眠いけどできるよ』
「確認しただけだよ」
『…おもらししてねえから』
「パット入れておこうか、もうトイレ行くの嫌だろ」
『…うーん、いけるし、』
「もう今日は寝ちゃおうなー」
と、そのまま手を引いてベッドに連れてこうとしたが
『匡平、歯磨きまだ』
「あー、そうじゃん」
『はみがきしよ、』
と、そのまま手を引いて洗面所に向かい
眠そうにどうにか歯磨きをして
祈織はチラッとトイレに視線を送ったがめんどくさいのか今はやっぱりしたくないらしくなんにも言わないから
歯磨きが終わってそのまま祈織を寝室に連れていく
『匡平、おやすみ』
「あぁ、おやすみ」
と、すぐにくっついてくる祈織の背中を撫でる
昔よりはだいぶしっかりしてきたんだけどな
あと一息でおねしょもおもらしもしなくなりそうだがもう少し気長に付き合わないとだな、これは
『匡平、すきだよ』
と、眠そうに伝えてくるかわいいやつ
今日はすげえ甘えん坊だな、こいつ
「あぁ、俺もだよ」
と、背中を撫でると
腕の中でふにゃふにゃと笑う祈織
はやくまた一緒に暮らしてえなあ
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