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第4話

大輝は大好きな蒼大さんが聖輝さんに初めて作った料理とケーキを教えて貰って自分も大切な人にいつか食べて欲しいと願っていたと話してくれた。 その中でも蒼大さんが作ったシフォンケーキは実の両親が美味しいと言って食べたからそれを俺にも食べさせたかったと言った。 「まだ僕が赤ん坊で2人が高校生でやっと気持ちが通じて付き合うようになってから聖輝兄に食べて貰ったシフォンケーキだって思い出が詰まったケーキ。」 「なんかいいな思い出のケーキとか・・・。」 「うん。だからね僕も海君とたくさんクリスマスに幸せな思い出を残したいんだ。」 そう言って大輝は俺の頬を両手で包み込むようにして上を向かせた。 急な事で焦ったが大輝の優しく笑いかける表情を見ると悲しい気分だったのが和らいだ。 不思議だよ大輝の笑顔を見ると落ち着いて嫌な事全て忘れまるで魔法にでもかけられたみたいに幸せな気持ちが溢れ出て来るんだ。 「クリスマスだからブッシュド・ノエルが良いのかもとか思ったんだけどね。」 そう言って少しだけ舌を出して笑う大輝。 俺はそっと大輝の手に触れて微笑みかけると大輝の目に涙が溜まり一粒零れ落ちて俺の頬を濡らす。 どんなに残酷な仕打ちをしても泣かなかった大輝が静かに涙を流している。 強がってはいるが小学校の入学式の前に両親を失ったんだ。 俺には想像もできないほど大輝は泣いたに違いない。

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