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第5話

入店して、30分ほどが経っただろうか。「見かけない顔だね」と声をかけてくる者がいた。そして、となりの空いた席に座ってくる。突然のことに、圭一郎はいささか驚いた。 リョウはバーテンダーにモスコミュールを注文すると、頬杖をつき、人懐っこい笑みを浮かべてこちらを見つめてくる。 「お兄さん、こういう店慣れてないでしょ?」 図星を突かれ、居心地の悪い思いがした。が、素直に首肯すれば、「みんな、最初はそうだよ」とありきたりなフォローの言葉が返ってきた。 「だからさ、俺が色々と教えてあげようかなって思ったんだけど、どうかな?」 ……穏やかな声色に親しみやすい笑顔。自分よりも10歳くらい若いであろう美男の誘いに、胸のうちで警戒しつつも、幸央への思慕を断ち切らんと、半ば捨て鉢気味にこの店に訪れた身だ、「どうにでもなってしまえ」と思いながら、圭一郎はぎこちない微笑をリョウに向けた。 それからは、リョウの術中に自らハマりにいったようなものだった。彼の甘い言葉を真に受けたふりをし、慣れないながらも自分もその気だと仄めかし、そしてほろ酔いの状態で彼とラブホテルへと向かい、いとも容易く一線を越えた。 リョウとのセックスはたまらなく良かった。自分たちの身体の相性が良かったのか、それともリョウが床上手だからか。判然とはしないものの、理性は早々に彼に奪われ、圭一郎は彼の魅惑の肉体を貪り尽くした。熱くて気持ち良くて、何もかもがどうでもよくなって、四肢は快楽に溺れ、大脳辺縁系が歓喜しているようだった。 リョウは非常に感じやすかった。1月で34歳になったばかりの圭一郎よりも13も年下だが、経験人数はこちらをはるかに上回っているに違いない。色んな男に開発されてきたのだろう、女を抱いたことがないので分からないが、そこは排泄器官というより生殖機能のない女性器のようだと思っていいのかも知れない。 挿入したもので前立腺や奥を突けば、リョウは官能的な声をあげて裸体を大きく乱し、何度となく高みにのぼりつめていた。……そのさまがとてもいらやしく、いつしか食い入るように見つめていた圭一郎も、彼のなかで三度も達した。こんなにも情事で夢中になったのは、久しぶりのことだった。 バスタオルで髪を拭きながら、リョウのそばに腰をおろす。情事後の疲れと気だるさを孕んだ眼差しが向けられると同時に、朱色に染まる唇が左右に広がった。 「俺、ちょうどさ、水曜日の夜が空いたんだよね」 「……空いたというのは?」 「えっとね、毎週水曜日に会ってた人と連絡が取れなくなっちゃって。だからあの店に新しい相手を探しに行ってたんだー」 そこで見つけたのが、俺だったのか。 喜ぶべきかいなか、圭一郎は分からなかった。 「でね、宮田さん。俺とのえっち、どうだった?」 あまりにも直球な質問に、返答に窮してしまう。固まった圭一郎を見て、リョウは愉しげに笑う。 「俺はねぇ、すごく気持ちよかったよ。すごーくすごく、満足してる。だからね、もし宮田さんが良ければ、毎週水曜日の夜にお相手してくれないかなぁって、思ってみたり?」 依然、何も言えずにいた。リョウもこちらの返事を待っているのか、途端に静かになった。……しばし、沈黙が流れる。

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