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第15話

いつものようにふたりでシャワーを浴びた後、リョウは裸のままベッドに寝転がり、圭一郎は下着一枚でベッドに腰かけ、リョウの飲みさしのミネラルウォーターを飲んでいた。 リョウの他愛のない話に適当に相槌をうちながら、話題を切り出すタイミングを窺う。彼は最近原宿にできたハンバーガー店のチーズバーガーのカロリーがすごかった云々と、圭一郎にしてみれば心底どうでもいい話を、ひとりで楽しそうに喋っていた。ひと通り話を聞いていると、「誰とその店に行ったのか」という情報が欠けているのに気づいた。 そこをつついてみることにした。 「――……その店にはひとりで行ったのか?」 ぺらぺらと淀みなく喋っていたリョウが、一瞬固まったように見えた。が、彼はすぐに元の調子に戻って、締まりのない笑みを浮かべた。 「ううん、ベンチャー企業の社長さんとふたりでだよ」 「ベンチャー企業の社長……」 「うん。あぁ、あの時一緒にいた人じゃないよ」 「それも、お前の《支援者》か?」 《支援者》という表現が面白かったのか、リョウはカラカラと明るい笑い声をあげた。 「何それ、選挙みたい」 「じゃあ、はっきりと援助交際相手かって訊いた方が良かったか?」 「うーん、それは捻りがなくて面白くないよねぇ」 「……お前のなかにある物事の判断基準が、何となく分かってきたな」 圭一郎が半ば呆れて言えば、「俺ほど分かりやすい奴、そうそういないと思いますー」と間伸びした声が返ってくる。……今、この時だ。そう思い、圭一郎はリョウの白い裸体に向かって問いかける。 「これまで、誰とも付き合ったことはないのか?」 リョウが寝転んだまま、ゆっくりとこちらに顔を向けてくる。自然に切り出せたので、少しも怪訝な表情はされなかった。 「ないよ。少なくとも、俺のなかでは」 さらりと答えたリョウは裸体を起こし、胡座をかいて圭一郎を見た。以前に比べ、少しは関心を持たれているのは分かっていた。訊かれたからには、訊ねないとダメでしょと彼の顔には書かれていた。確かな手応えに、圭一郎は胸のうちがわずかに昂ぶったのを感じた。 「そう言えば、宮田さんはどうなの? モテるでしょ?」 よし、と内心呟く。けれども表層では事もなげに答える。 「モテるかどうかは分からないが、過去に付き合っていた人間は何人かいる」 「だよねぇ。だって、セックスに慣れてる感じあるもん」 ……コイツの中には、付き合うイコール肉体関係を持つという等式しかないのだろう。コイツはやはり、人を愛するということを知らないのだと、はっきりと確信した瞬間だった。 「どんな男の人と付き合ってきたの?」 興味津々とばかりに訊ねられ、圭一郎は昔の恋人たちについて思い出す。 「真面目な奴、慎重な奴、どこか掴みどころがなくて、何だか放っておけない奴……」 複数人を頭のなかに浮かべたはずなのに、口から出てきたのはすべて幸央のことだった。それとなくと思っていたのに、彼の話をしたくて堪らなかった。脈絡がないと分かっていたが、圭一郎の口は早まった。

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