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第24話

「なぜ、この店に就職した?」 「……あぁ、うん。そうだよね……ごめん」 リョウは非常にばつが悪そうに目を伏せた。その表情が、この再会が偶然でなかったと言っているようだった。 「……この店に就職したのは、前に宮田さんが通ってるって聞いたから。ここで働いてたら、宮田さんに会えるかなぁって思って」 「俺に……?」 確かにいつかの夜、リョウに話したことがあった。ここの洋食屋のオムライスが好きで、職場の昼休みによく食べに行っていると。見た目は昔ながらのオムライスだが、中身のバターライスには鶏肉ではなく牛ミンチが使われていて、スプーンで割くと程よくとろけたチーズが糸を引いて出てくる。その味がすごく好きだから常連になったと、圭一郎は語っていた。 「気持ち悪がられるのは分かってたけど、あの頃の俺とは違うんだって言うのを見せたくて……俺、あれから、誰とも寝てないよ。真面目に学校に通って、生活の援助してもらってた男の人たちと関係を切って、飲食店のバイトで生計立てて……ろくでなしは辞めて、自立した生活送ってる。それを知ってもらったら、宮田さん、俺に対する印象が変わるかなって思ったんだ」 圭一郎は固まった。固まってまた、言葉に窮した。……最後に彼と会った時に、感情的に放った自分のひと言が、まさか彼が更生するきっかけとなっていたなど、いったい誰が想像できただろう。この自分が、ひとりの青年を諭すようなことをしていたなんて。感心すればいいのか、嗤っていいのか、俺も歳をとってしまったとしみじみすればいいのか、てんで分からなかった。 「宮田さん。この店、来るの久しぶり?」 依然おじおじとしながらも訊ねてくるリョウに、はっと我に返り、「あぁ」とぎこちなくうなずく。新卒者のメンターとして、この1ヶ月間慌ただしくしており、ここに来る時間や余裕がなかった話をすれば、「そっか」と彼は労うように笑ってくれた。 「もう、ここには来ないのかなって思って諦めてたんだけど、俺は会えて良かったって思ってる……けど、すごく緊張して、上手く喋れないや」 目元や口元に浮かんだ笑みに苦いものが混ざっていくのを見て、圭一郎はリョウから視線を外した。彼の言葉や表情から汲みとれる感情に、なおいっそう戸惑い、混乱していた。

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