鈍感だと言われることが多い。自分でもそうだと思う。取り分け、自身に向けられる思慕については、口で伝えられるまでまったく気づかない、なんてことは何度となくあった。 しかし、今回ばかりははっきりと感づいていた。あれだけのらりくらりとしていたリョウに、こんなにも分かりやすい態度を見せられては、勘違いでは決してないだろう。再度になるが、目の前にいる美青年は、本当にあのリョウなのかと疑いなくなってしまった。 「……リョウ」 「俺、宮田さんのことが好きだよ」 分かってはいたが、いざ口にされると胸のうちにさざ波が立った。心良さなどはなかった。あるのはただの底深い疑問だった。 「……何でだ？」 圭一郎はパサパサに乾いた唇を開く。「何で、俺なんだ？ ……俺はあの時、はっきり言ってお前を見下していた。そうだと分かった上で、お前はそう言っているのか？」 「分かってるよ。俺、誰に何を言われても気にしないだけで、ちゃんと分かってる。これまで色んな人にたくさん言われてきたし、そういう目で見られてた」 リョウは静かに苦笑し、後頭部をぼりぼりと掻いた。 「でも本当に、なんでだろうね？ ……何だかすごーく、宮田さんが好きなんだけど、理由はよく分かんないや。ただ宮田さんにまた会いたくて、話がしたくて、うん……」 「……確かに、よく分からないな」 「でしょ？ 変な感じ。あ、変って言っても嫌な意味じゃなくて……」 そんなに慌てて弁解されなくとも、リョウの言わんとすることが、よく分からないと言いながらも、ぼんやりと理解できていた。人を好きになるのに理由はいらないとよく言うが、まったくもってその通りだ。顔、身体、声、性格、雰囲気……惹かれるきっかけがそのいずれかにあったとしても、行き着くところはもっと曖昧模糊としたものだ。 何故だか分からないが、アイツと一緒にいたい。そう想っていた時期が、もはや懐かしかった。 「ただ、そうなんだって自覚した瞬間は、あの時だよ。あんなこと、誰にも言われたことがなかったから、結構ムカついたし、そんなことないって言い返しそうになった時に、『あっ』て。……だって図星なら、ぐうの音も出なかったと思うんだよね。そういう経験をしてるから、反論したくなったというか。それで、気づいたんだ。俺、宮田さんのことが好きなのかもって」 リョウはそして、諦念の表情を浮かべた。 「……今は違うって言っても、これまで誰とでも簡単に寝てた奴を信用できないよね。……でも本当に、俺がここまでちゃんとした人間になったのは、宮田さんのおかげだよ。それだけでも、知ってほしかった」