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第69話

「早く早くぅ」 「待って!」 心の準備が必要なの! 俺はあーんを強要されてる。 やるしかないのか?やるかぁ、 結構恥ずかしい。 いや、結構どころじゃない。 尋常じゃなく恥ずかしい。 「ぁ、あーん…」 多分俺は羞恥で真っ赤だと思う。 匡はもぐもぐ食べながら頷いている。 「どう?」 やっぱり美味しくないのか? それとも普通すぎる? 俺は匡の顔色を伺う。 「美味しいよ!」 「よかった」 お気に召したらしい。 とりあえずホッとした。 でも何故か匡は自分でスプーンを持とうとしない。 「自分で食べてよ」 「え?あーんは?」 「したじゃん!」 「全部してよ」 はァァァァ、? やるわけないだろ、あんなに恥ずかしいのに 「さっきしたからもうしない」 「えー」 「食べないなら置いといて」 俺は自分のカレーを食べ始める。 おお!美味しい! 野菜の大きさはバラバラだけど味は大丈夫だ。 「食べるけどさぁ〜」 あーんしない事に不満を言いながら匡も食べてくれる。 喜んでくれて良かった。 あれ、あーん断ったらダメだったかな? でもでも、一回はしたし… 俺のスマホが危うい…? 「ねぇ、スマホは…?」 「んー、うん」 微妙な返事しか返ってこない。 やっぱダメ…? 俺の初の手料理だよ? そんなに価値はないだろうけど…

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