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第92話

気持ちを理解したのはいいけど、匡には許嫁の凛花さんがいることを思いだした。 「はぁ…失恋だよぉ」 「うわぁっ、ちょっ、落ち着けって」 涙ぐみながら光輝に抱きつく。 勢い余って押し倒してしまった。 光輝は鍛えているのか俺を上に乗せたまま腹筋を使って起き上がる。 「許嫁がいても拉致るぐらい好かれてるんじゃねーの?」 「たまたま俺が通りかかっただけかも知んないじゃん!」 「そーかもだけど…。ん?こんなの付けてた??」 そう言って首筋に手を持ってくる。 ん?なんか付けてたっけ? 自分の手で確認すると、匡から貰ったネックレスだった。 「あ…匡から貰ったの」 特注とか言ってたから高いんだろうな… これも返した方がいいかな…? 取りたくないけど取るか… そう思って名残惜しいけど外そうとする。 …ん?カチャカチャとうなじ辺りにある金具をいじるけど取れそうにない。 俺こんなに不器用だっけ? 「光輝〜、これ取って」 「いいのか?」 「うん、返さなきゃ」 「…そっか、分かった」 俺はまだ光輝の膝の上にいる状態だった。 光輝の方が少し、少しね!背が高いから俺を膝に乗せててもうなじを見下ろせる。 そのままの体制で金具をいじる。 「んー、こう…?こっち?ん?」 「まだ〜?」 「なんか全然取れねーんだけど…」 「えー、光輝器用だったじゃん」

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