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第97話

「また居なくなったんですか?」 「あぁ」 「場所は?」 「ここだ。」 アプリで確認した場所の住所をナビに打ち込む。 そこからは早かった。 車で数十分。 鍵は大家に金をチラつかせてゲット。 大家の話によるとセイと同い年の男が一人暮らしらしい。 ふーん… 鍵を開ける。 割と静かに開けたと思ったが、セイには聞こえたらしい。 ドアを隔てた先で声が聞こえる。 セイともう1人。男の声。 「聞こえたって!」 「えぇー?」 「泥棒?」 随分と仲が良さそうで。 ちょっとイラッとしたのは内緒。 まだ怖かってる2人を脅かそうと動いてみる。 「ほら!音聞こえた!」 「マジじゃん…」 ここでガチャっとドアを開ける。 それに驚いたのか2人は叫んだ。 驚くまではいい。その後だ。 セイは隣の男に抱きつき、勢い余って押し倒している。 あー、イライラする。 「何してんだ?」 自分でも思ってたより低い声が出た。 「俺からは逃げた癖に他の男の家でそんなに密着して?挙げ句押し倒して?帰ったら覚えとけよ」 「ひぃっ!」 またそれで抱きつく。 逆効果なの分かってる? それとも煽ってんの? イライラして力ずくで引き離し担ぐ。 セイが暴れるが知ったこっちゃない。 逃げ出したセイが悪い。 逃げ出されて機嫌が悪い俺に追い打ちをかけるやつがいた。

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