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第137話

「ちょっと言ってくる!」 光輝を置いて、ユズさんと思われる人に話しかける。 「こんにちは!」 元気よく挨拶をしたが、顔は俯いたままでなんの反応もしない。 寝てる…? 「こんにちはぁ!」 顔を覗き込んで再度挨拶をする。 なんだ、起きてるじゃん。 目開いてるし、俺が覗き込んだ時びっくりした表情だったし。 「ねぇねぇ、ちょっと聞きたいんだけどさ、いい?」 あれ?また反応してくれないや… 「聞こえてる〜?」 懲りずに何回も話しかけるが決まって反応はない。 それどころか俯く角度が下がったようにも感じる。 耳が聞こえてない?それとも無視してる…? 「おい、聖也!」 「うわっ!引っ張んないでよ!」 俺が話しかけるのに夢中になっている所に光輝が来た。 そのまま俺の腕を引き、窓際まで連れてこられた。 「もう何〜?俺あの子と話したかったのにぃ」 「諦めろ。」 「何で?」 「いや、あいつさ、話さねぇんだよ。」 「え?」 光輝によると、あの子は話さないらしい。 先生も知っているのか授業であの子を当てる事はなく、クラスのほとんどが声を聞いた事がないと言う。 頷いたり、首を振ったりで最低限の意思疎通はしてるらしい。 「耳が悪いの?」 「どーだろ?それすらも分からん。」 難聴の人って話せない人も多いからそうなのかな…

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