198 / 268

第198話

息を切らせた人の気配が近づいて来て、捕まると思ったのに… ふわっと抱きしめられた。 俺が感じたのは懐かしい匂いのする優しい手だった。 恐る恐る目を開けると、 「き、匡…」 「遅くなってごめん」 「匡…?ほんとに?」 「うん」 「…匡だっ!」 安心したのと今までの不安や恐怖でギュッと匡に抱きつく。 さっきまでの攻防戦意味なかったじゃん。 ホッと息をつく。 「セイから離れて!」 「ちょっ…こは待って!」 下に避難してたこはが戻って来て、匡を敵と勘違いしたらしい。 思いっきり匡を蹴飛ばして俺を覗き込む。 「セイ大丈夫!?逃げよ!」 「待って、この人助けに来てくれたの!」 「え?」 「俺の恋人」 「え!?蹴飛ばしちゃった!」 こはは匡の顔を知らなかったようで今更になって慌てている。 匡は蹴られた横腹当たりを摩りながら起き上がった。 「いてて…はぁ、助けに来て蹴られるとは思わなかった。」 「すみません…」 「まぁ、いーけど。で?2人とも怪我はない?」 「大丈夫、打ち身とかはあるけど血は出てない。」 「私も何もない…です」 「良かった。」 匡はちょっと待ってねと言い、電話をかけ始めた。 「セイ見つけた。うん、2人とも無事。全員捕まえといて。あと車。表でいーよ。うん、じゃ。」 「緋山さん?」 「うん、帰ろっか」

ともだちにシェアしよう!