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第15話 微睡と想い人

ゴツゴツとした固い枕の感覚と腰に巻き付けられた指の動きで、微睡みながらも薄らと瞼を開く。目の前には鍛えられた胸筋が飛び込み、日に焼けた肌と分厚い胸板が押し当てられた。 一瞬何が起こったのか、理解出来ずに戸惑った。 「……桐生っ……んっ……」 腰に回っていた手を引き寄せて、桐生は首筋に顔を沈め、うなじを浅く噛んだ。 「……っ……ぁ……」 噛んだと思うと、何度も軽く吸われ舌先で更に舐め回された。ビリビリとした甘い刺激がご無沙汰な身体に電流を流すように走る。 そして腰から腰帯である腸骨を優しく撫でながら、勃ちかけたモノへ進む手の動きを感じた。 「……っ……つき……」 桐生は耳元でそう呟きながら、また首筋を甘噛みする。名前を呼ばれたような気がして、一瞬だけ胸が高鳴った。 違う、間違えてる。   上手く働かない思考だが、そうでないと停止をかける。 急いで、桐生の恋人の名前を思い出した。 「き、りゅ……う……」 はっとして、いつの間にか両手が背中に回され、隆起した硬い背筋を感じた。 寝ぼけて恋人と間違えてる。 「き……ぁ……」 次の瞬間、名前をもう一度呼ぼうとするが深く口づけをされた。長い舌が侵入し、唾液を吸われた。そして歯茎を吸うように舐められる。 あまりのショックに目を見開くが、桐生はまだ目を閉じたままだ。 身を捩ろうとすると、斜めにのし上がってきて180センチ以上ある体重と強靭な身体から逃げ切ることが出来なかった。 「……ふぁ……き、桐生……! 起きろ……!」 唇を離した瞬間を狙って、精一杯怒鳴った。 桐生は驚いて目を開き、舌打ちをした。 「……ッ。……悪い、間違えた」 ジロリとこちらを見ると、明らかに桐生は機嫌が悪く不機嫌だ。朝から身体を弄られた自分としてはなんとも理不尽で、立場は逆な筈だ 「……どけよっ!」 朝から理不尽に火照った身体を鎮めつつ、半勃ちのモノを閉じながら、桐生を睨めつけると桐生は気に入らなかったのか更に体重を押し付けた。 同時に桐生の雄茎が当たった。 それは下着の上からでも雄としての重厚感を表していた。恐怖で布団に逃げ場を求めるが、無駄だった。 「……せっかくだから抜いてやるよ」 低く耳元で囁かれ、耳朶を噛まれた。 乱れた前髪が桐生の切れ長の瞳を隠して、隙間から見える。黒曜石のような深い呂色のような瞳に吸い込まれそうになる。 抵抗していた両手は左手で纏められ、シーツに縫い止められた。 桐生は薄らと笑みを浮かべ、無言で右手で服を巻くし上げた。そして誰にも刺激を受けていないご無沙汰な胸の突起を吸った。 乳首を舌で愛撫しながら慣れた手つきで下着を下ろし、勃ちかけた陰茎を優しく扱いた。 「おまえだって反応してる」 「……ちがっ……ぁああっ……!」 漏れ出る喘ぎ声を抑えるが、意志とは裏腹に久しぶりの刺激に反応が良い。 のしかかる雄に大した抵抗もできず、身体を捩ってしまう。快感だけが己を支配する感覚に陥いると、忘れていた桐生に抱かれていた記憶がまざまさと思い出された。 「……いや……だ……んんっ……」 言葉とは裏腹に乳首を強く噛まれ吸われると、ビクつきながらも、もっと吸ってくれと胸が迫り上がる。 己の分身も先端から液が溢れ出るように卑猥な音をだす。ぼやけた意志とは裏腹に分身は張り詰め膨らみ、早く解放しろと根本を動かすように尻が上がるが、桐生は中々到達させてくれなかった。 めちゃくちゃだ……っ……! だが絶え間ない刺激と愛撫のせいで頭は朦朧とし、どうしても過去の自分がこんな風に抱かれていたのを重なる。 「……桐生、お願いだ……やめてくれ……っぁっあっ……」 そう言うと、目尻に溜まった涙を吸われ、また唇を合わせた。そのまま手の動きが早められ、絶頂に達した。   絶頂に達すると、桐生はじっとこちらを見ていた。うっすらと額に汗がでている。 お互い息が上がっていた。 縫い止めていた手が緩み、桐生をどかせた。 着ていた服は最悪に気持ち悪かった。 「……俺はおまえの恋人じゃない。……前みたいに抱かないでくれ」 吐き捨てるように言って、桐生を置いてよろよろと浴室へ逃げた。 桐生がどんな顔をしていたのかは覚えていない。 すぐにお湯がでず、冷たい水を浴びながら気持ちを落ち着かせる。 桐生は俺をまだセフレとしか思っていない事が、ただただ悲しくて、桐生に触れた場所が熱く火照る自分の身体が憎かった。

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