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第79話 悲痛な朝3
皐月がドアを閉め、静かな室内で一人余韻に酔いしれたが、何も感じられなかった。
雄を舐めさせ、自分で挿入させて、ろくに愛撫も前戯もせずに皐月は痛みを感じながら懸命に動いていた。
目尻には涙がたまって、時折声を押さえながら必死で躰を揺らすのを見て、心が痛んだ。
だが同時に雄の欲情を駆り立てた。
小さく漏れ出た喘ぎ声は愛しくて、抱き締めたい衝動に襲われそうだった。
柔らかな尻が艶かしく前後し、窄まりは締め付けながら刺激し内壁は熱く擦れ、柔かく包んで離そうとはしなかった。
皐月が愛おしく、求めてくる姿は嬉しい。
そして皐月を手離す為に、一番冷たく酷い方法で抱いた。
まるで性欲を満たさせるだけの行為に意味を感じ取れなかった。
それだけでも胸が痛くて、唇を重ねようとする皐月を意図的に避け、傷つけた。
傷つける度に、桐生か黒木なのか、誰かが皐月をその分優しくするだろうと思った。
抱き締めたら、手離せそうにない。
唇を重ねるともっと深く舌をいれて口腔を堪能しそうで衝動に耐えた。
散々傷つけて、躰だけで繋ぎ止めて終わった。
何度もやり直そうとしたが、桐生への嫉妬が抑えられない。
こんなに狂おしく、夢中になった事はない。
皐月が好きだ。
まだ愛してる
でも、ごめん。
ごめん、皐月。
このままだと、皐月を苦しめるだけだ。
桐生と会っていた事を知っただけで狂いそうで、何度も責めて抱いた。
昔の方がもっと優しく抱いては愛し合った気がする。
あの頃の自分の方が皐月を大切にできたはずだ。
記憶が戻って皐月は昔の自分と対比させながら、黙って従っていたんだと思うと胸が張り裂けそうだった。
蒼は終わったソファに座ったまま携帯をとって、桐生の番号を探した。
「もしもし、桐生くん。僕だよ。今大丈夫かな?」
先程とは違う酷く優しい甘い声が喉から出る。
本当はその声で、皐月を抱いてやりたかった。
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