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第78話 悲痛な朝2
「蒼、前に言ったの覚えてる?物分かりが良すぎるって。縋ってもいいだろ……」
頭の中が冷えていくのを感じ、わざと明るく呟いた。
「……やめよう、気分じゃない」
やんわりと窘められたが、無理矢理毛布の中に潜り込み、露わになっていた蒼の雄を舐めた。
「……ん、皐月、やめて」
蒼の言葉を無視して、柔らかい毛布に潜りながらむっとした雄の匂いに顔を顰め、必死に力のない雄を頬張った。鈴穴に残った残滓があり、舌先を使って吸い舐めとり、雄茎を深く根元まで喉で扱いた。
最後だ。
最後なら酷くされて終わりたい。
恋人じゃないのなら、縋ってでもこんな関係はめちゃくちゃにして終わりたかった。
苦しくて吐き気と嫌悪感を我慢しながら、必死に吸ったり喉で扱きながら懸命に雄を硬くする為に頑張った。
その姿は酷く惨めで浅ましい。
結局、言われたとおり縋りついても、無駄なのは分かっていた。
蒼の雄がやっと首を跨げて持ち上がると、そのまま唾液でぬるついた雄をあてがい、仰向けになったままの蒼の上にまたがった。緩んでいた後孔は一気に雄をずぶずぶと飲み込んでくれた。蒼はただ、冷淡にそれを眺めた。
「………ぅあ……っ……あああッ……あッ……」
それでも痛みを感じ、眉間に皺を寄せて飲み込むと腰を振った。
「皐月、やめよう。僕は動かない」
そう言いながら、尻を押さえて動きを止めようとする蒼も僅かに感じているの表情が読み取れた。蒼は苦しそうに顔を歪め、自分はまだそそり勃つ雄の屹立に安堵を覚えながら必死に腰を揺らした。
キスしようと身体を傾けて唇を重ねようとすると顔を背け避けられた。ただ繋がっているだけの行為がこんなに辛いとは思わなかった。
「……中、だして……ァッ……」
押し殺しながら、喘いで尻を振った。
キスも愛撫もなく、何度も抱かれたなかで一番辛かった。
蒼は耐えられずに腰に手をやると、強く打ち込み柔らかく熟した内壁に一気に放出した。
腹の中でビクビクと痙攣し、固い雄が柔くなっていくのを感じ取れる。
「皐月、どいてくれるかな」
そして全て出し終わると余韻もなく、冷たく言葉を言い放つと、蒼は跨っていた自分をどけて雄を抜き取った。額には少し汗が滲んで、息が少し上がり、ぞんざいな扱いを受けながらもそのセクシーな横顔に見惚れてしまっていた。
「ん…………ごめん……」
「ごめん、朝倉くんとこれから出かけるんだ。シャワーを浴びて早く出て行ってもらってもいい?」
どこまで傷けばいいのかわからないほど、蒼は冷たかった。
「分かった、早く出るよ」
今までこんなに冷たく突き離されたことはなかった。立ち上がると白濁とした体液が脚を伝い落ちた。気遣われる事もなく、自分は蒼にとって性欲処理でしかなかったと痛感した。
「……泣くなら、いつもの場所で桐生君に慰めてもらえばいいよ」
シャワーを浴びようと立ち上がると、蒼は優しく微笑んで言った。
「知ってたんだ」
振り返って表情を見ようとしたが、朝日が薄く逆光を射して読み取れなかった。
「もう二度と君の前に現れないから、安心して」
求められる事すらなく、愛撫もなく、必死で腰を動かしたが蒼の意志は変わらなかった。
「……分かった」
それだけ呟いて、シャワーを浴びて蒼のマンションから出ていった。
優しかった蒼はもういない。
自分のせいで蒼を変えてしまった。
最後に一番冷たい蒼を自分のこの惨めな身体に上書き出来た。
それで十分だ。
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