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第39話 桐生の看病

熱冷ましシートを額に貼り付けて2本の締切を無事になんとか終え、桐生が用意したおかゆを食べていた。おかゆは鷄だしベースに塩で味付けされ、痛んだ喉に優しく食べやすく美味しかった。 食べながら携帯を見ていない事に気づき、携帯を覗くといつの間にか菫からメールを受信していた。  「……ご……ご……!」 変な声がおかゆと共に漏れ出て、メールを確認する手が震えた。 時計の針は13時を過ぎており、急いで蒼の携帯へ電話するが呼び出し音だけ鳴って繋がらなかった。 その時、玄関から桐生が帰宅した音がして飛び出すように玄関へ走った。 「ただいま。……暑いな」 立ったまま桐生は汗を拭って、清涼飲料水CMさながら爽やかにワイシャツを仰いでいた。 「……き、桐生さ、こ、これからどこかいく?」 「は?」  額も汗のせいで整えられた髪も僅かに乱れ、腕捲りされ手で水を取り出して飲んでいた。 喉が渇いたせいか、口元から水が零れて男の色気を感じたが桐生は飲み終えると眼光鋭く睨みつけてきた。 「……新宿にあるパッセルのプリン食べたいな……」 「おまえ。……いま、帰ってきたばかりの俺にそれを言うのか?」 桐生は溜息をついて、熱冷ましシートを額に貼った間抜けな自分を呆れた様子で、かなり、物凄く侮蔑した視線を送った。 「……ごめん……けど、どうしてもあの程よい甘さのプリン食べたくさ……。ね、桐生、俺プリン食べたい。」 鉢合わせを避けようと、焦って桐生を要らぬ口実を作り大して可愛くないのに瞳を潤ませて、疲労した桐生を見つめると、桐生は諦めた様子だった。 「……ッ分かったよ。……買ってくるけど、ちゃんと寝てろよ!」 吐き捨てるように桐生は言って、ピシャリと玄関の扉を閉めてまたもと来た道を辿って出ていった。 これで2時間程、確保した。 無事鉢合わせは避けられる。 桐生が出て行ったのを確認すると、急いでシャワーを浴びてある程度見れて、大丈夫そうな服に袖を通した。

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